河井side
もう、あなたちゃんが実家に戻って1年が経とうとしとる。
俺は、あなたちゃんが大阪を出る日、新幹線の時間に間に合わへんかったことにずっと後悔しとった。
あれから、電話してもLINEしてもあなたちゃんに届くことはなかった。
一回だけ、ゆりやんなら連絡先を知っとるかもと思って聞いてみたことがあった。
ゆりやんは申し訳なさそうにそう言った。
それから、東京に行っても、大阪に帰ってきても、あなたちゃんを忘れる日はなかった。
わかっとるよ、そんなん…。
仕事に私情を持ち込んだらあかん…。
切り替えな。
「またいつか」…。
俺は黙って、稲田の次の言葉を待つ。
稲田にはなんだかんだ言って、結構助けられてるな…。
俺は、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟いて、ロケ地に向かって出発した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。