第4話

来ない
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2020/09/09 08:19
1週間後。
あれから檜谷は全く学校に顔を出さなくなった。彼は友達が少なく影も薄いので、クラスの話題はすぐに別のものになってしまい、彼のことを心配する人はもはや東だけになってしまった。
学校側もこちらに心配をかけさせないためか、何か言うような気配はない。
東 直樹
東 直樹
…今日は聞こう。学年主任なら知ってるはず……
数日前から一向に気分の良くならない東は、決意を固め、主任に話を聞くことにした。
♢♢♢
学年主任
裕二のことね…
主任を訪ねると、誰も使っていない、空き教室に通された。
東 直樹
東 直樹
教えてください。テストの日、倒れた男子生徒と檜谷がどう関係して、今何が起こっているのか。
俺、大事な幼なじみとして知っておきたいんです。
学年主任
……分かった。でもこれは個人のことだから誰にも話しちゃいけない。直樹がそれを絶対守れるなら、話すわ。
東 直樹
東 直樹
……勿論です。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ︎︎                                                                             ︎︎
学年主任
…落ち着いて聞いてね。
今、裕二は病院にいるの。あの日、倒れた時には既に意識がなくて……救急搬送されて手術は受けて、今は安静らしいんだけど……
東 直樹
東 直樹
そんな……
東 直樹
東 直樹
裕…裕二、また戻ってきますよね?
学年主任
……今のところ、「はい」とは言えない。とりあえず今は休学扱いかな、という話にはなってる。
東 直樹
東 直樹
そうですか……
東 直樹
東 直樹
先生。その…無理な話ではあると思うんですが……
東 直樹
東 直樹
裕二のお見舞いって、行かせて貰えますか……?
学年主任
……。
分からない。裕二の体調とか、本人の希望とか色々あるから…
東 直樹
東 直樹
お願いします、先生。 
どうしても行きたいんです。
東 直樹
東 直樹
あいつ友達いないから寂しいだろうし…
幼なじみとして、1番の親友として、俺はあいつに会いたいんです!
学年主任
……
学年主任
そこまで言うなら、行ってもいいかどうか、聞くことはしてみるよ。
東 直樹
東 直樹
!ありがとうございます…!
学年主任
その代わり、もし行けたらそれは自己責任よ。
どんな事があっても、決して目を逸らしてはいけない。
学年主任
それと……自分ができる、精一杯のことをしなさい。
分かった?
東 直樹
東 直樹
はい。先生。
東 直樹
東 直樹
ありがとうございました。
♢♢♢
ガララ…と教室のドアを閉めた後、東は直ぐ、膝から崩れ落ちた。
嘘だ。嘘だと言ってくれ。
あの日倒れたのは本当に裕だった。
緊急搬送?手術?何から何まで本当に信じられない。信じていたのに。ずっと、ずっと祈っていたのに。
神様は無慈悲だ──────


でも、まだ悪い方向に決まったわけじゃない。もしかしたらたまたま調子が悪かっただけなのかもしれないし、何かの軽い感染症にかかったのかもしれない。
真実は、病院に行ってから聞こう。



今はただ、許可が降りるか、裕が無事か、それを願うだけだ。
幼なじみとして、1番の親友として、そしてずっと煩わせてきた、片思いの相手として……
一刻も早く、お前に会いたい──────

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