『あなた、君を、俺の家族に逢わせたいと思っている。』
そう告げたあの日。
俺はあなたとの温もりに溺れず帰宅した。
まだ、いつ逢うのか。
自宅なのか外食なのか。
何も決めていない。
ただ、父上や千寿郎のことも含めて
自分を知ってもらい、添い遂げたい気持ちがあるのか確認したい。
俺自身も…千寿郎のことがあって毎夜、帰ってしまうのだから。
あなたなら、解ってくれるかと…
淡く期待しているのだろう。
数日してあなたとの事を
任務で一緒だった宇随に相談した。
「で、あなたは、了承したのかよ?」
「否、あまりに気まずくて俺がそのまま帰ってきてしまった…。」
「………はぁ!?
煉獄、女じゃあるまいし…そこは…!」
「むぅ。俺も解ってるんだが…
やはり強く出れん。
俺自身もいつ命を落とすかもわからん。
このまま想いを形にして良いものか…。」
「そんなの、いいにきまってんだろ!
俺様のように派手に生き、今を満喫しねーと後悔しか残らねーぞ。
せっかく…好きだと思える相手に出逢えたんだろうが。」
宇随なら背中は押してくれると思っていた。
奥方が3人もいるのだ。
何かあれば言ってくれると。
信頼していたのだが…
やはり簡単に言ってくれるな。
「煉獄家も家柄として悪くないつもりで育ってきたが、さすがに久堂家相手だと…。
住む世界が違いすぎたり、嫁にもらってしまって良いものか迷う所なのだよ。」
「まぁ、あなたが抱えてるものは相当だけどな。
でも煉獄が良くて一緒にいるんだろ?
煉獄が好きだから共に過ごすんだろう?
少なくとも嫌いじゃねーから、話すだけ話してみろよ。ダメなら考えようぜ。」
そうだな。
難しいことはまた考えよう。
まわりの事なら把握し理解し、対策できるが…
己の事となると本当に難しいものだ。
宇随には感謝しかない。
いつも鴉にそのまま言伝を頼むが
今回は手紙を渡すよう頼んだ。
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あなたへ
先日は、急なことを言ってすまない。
俺は、あなたとの時間に大変癒されている。
いつも君には感謝が尽きない。
仕事も忙しいだろうが、一つずつの課題を解決し共に進める道を見つけたいと切に願っている次第だ。
家族へも紹介したいのは、本当だが突然の申し出に君が負担に感じていないかと気にかかっている。
ついては一度二人でゆっくり話す時間がほしい。
これは次逢った時に伝えたい言葉だが
あなた、心から君を愛している。
煉獄杏寿郎
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『あなた、君を、俺の家族に逢わせたいと思っている。』
そう告げたあの日。
俺はあなたとの温もりに溺れず帰宅した。
まだ、いつ逢うのか。
自宅なのか外食なのか。
何も決めていない。
ただ、父上や千寿郎のことも含めて
自分を知ってもらい、添い遂げたい気持ちがあるのか確認したい。
俺自身も…千寿郎のことがあって毎夜、帰ってしまうのだから。
あなたなら、解ってくれるかと…
淡く期待しているのだろう。
あれから5日程してあなたとの事を
任務で一緒だった宇随に相談した。
「で、あなたは、了承したのかよ?」
「否、あまりに気まずくて俺がそのまま帰ってきてしまった…。」
「………はぁ!?
煉獄、女じゃあるまいし…そこは…!」
「むぅ。俺も解ってるんだが…
やはり強く出れん。
俺自身もいつ命を落とすかもわからん。
このまま想いを形にして良いものか…。」
「そんなの、いいにきまってんだろ!
俺様のように派手に生き、今を満喫しねーと後悔しか残らねーぞ。
せっかく…好きだと思える相手に出逢えたんだろうが。」
宇随なら背中は押してくれると思っていた。
奥方が3人もいるのだ。
何かあれば言ってくれると。
信頼していたのだが…
宇随からは、予想外の言葉が続いた。
「…ふふっ!ははっ!
全く、知らないつもりで行かせようと思ったがな…
あーー、だめだ!
お前ら通じすぎてんだよ。安心しろ!」
「…ん? どういう…」
「いや、一昨日。
いつもの飲み屋であなたに逢ってな。
『煉獄家に招かれたんだけど…
格式あるお家っぽいし、やっぱ着物じゃないと変かな!?
お父様も柱だったって…怖かったらどうしよう。天元、逢ったことないの!?』
って、ド派手に慌てて相談してきたんだよ。」
ーーなるほど。
俺ばかりが心配してるわけじゃなかったか。
「宇随、ありがとう。」
「いいってことよ。
上手く行くといいな。
あなたにはいつものお前で行けと伝えたが、事前に背中押してやってくれよ。」
「うむ!俺にとってもあなたにとっても
宇随は、よき友だ!恩に着る。」
友人、親友には、いざと言う時に助けられる。
身に沁みて実感するな。
明日、あなたに手紙を送り
日取りや顔合わせについて話そう。
俺ばかりが本気になっていないか
あなたは拒んでしまわないか
酷く不安だった心が少し弛んだ気がした。
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あなたへ
先日は突然の申し出に君を驚かせてしまい申し訳ない。
俺はこの先も君の側に在りたいと思う。
その上で家族のことを知ってもらいたいと思ったのだ。
君の不安もきっとある。
それは俺も承知だ。
一度、日取りを含め、お互いについて話そう。
何があっても君を守る。
煉獄杏寿郎
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鴉は夜な夜なあなたの元へ
想いを込めた手紙を届けてくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。