第9話

子犬とオオカミ ~佐野~
963
2021/03/01 12:54




あなたside




「なぁー、ホンマに行くん?」



『行くって』




さっきからずっとこの会話



今日は、会社の飲み会で



年に数回しかないから、



毎回顔を出すようにしとる



その度に同じ会話を繰り返す




「なーぁー、ホンマに行くん?」



『行くってゆうてるやろー、

ほら、ひっつかんといて』



「やってさ、男の人も居るんやろ」



『そりゃ、まぁ仕事仲間ですから』



「やっぱ嫌や!

行かんといて!」



『んもー、いい加減諦めてや

毎回そう言って結局負けるんわかってるやろ』



「イヤやもん」



『なんで?

別になんもないって』



「わからんやん!

あなたちゃんのこと狙っとるかもしれやんやろ!」



『ないって、ただの仕事仲間』



「あなたちゃんがそう思っとったって、

相手がそうやとは限らんやん」




ずーっとこんな感じて、



行く準備をする私の周りをうろちょろしとる




『わかった、な

分かったから』




そう言うと




「えっ!行かんでくれるん?」




って目をキラキラさせた晶哉




『誰も行かんなんて言うとらん

ただ、男の人の隣には座らんし、

ちゃんと牽制張っとくから

それで諦めて、』




そう言うと




「んーーーーー!!!!」




って言いながら



ソファーの上でクッション抱えてジタバタしとる




『じゃあ、言ってくるね』




そう言うと



クッションを抱えたまま近づいて来る




「じゃあこれだけ」




そう言ったかと思ったら



一気に視界が暗くなって



首すじにチクッとした痛みを感じた



その瞬間何をされたか分かって




『あっ!ちょっと!

変なん付けやんといてよ』




って言うけど




「男避けやからええの」




って言って笑った




『もー、知らん!』




そう言うと




「やって、嫌やもん」




ってまたしゅんとする



いつもは子犬のくせに



こういう時だけはオオカミになるところがズルい




『じゃあね、』



「約束守ってや」



『ハイハイ』




と軽くあしらって家を出た







もしかしたら、私は



この感じが好きで飲み会に行ってるのかな、



なんて歩きながら思った





晶哉
いい子で居るから、早く帰ってきてな

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