第17話

顔晴れ ~桐山~
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2021/03/25 12:00



桐山side




『おつかれさん、また』


一緒に乗っとった淳太くんと、
送ってくれたマネージャーに挨拶して車を出る


いつもなら外から見えるはずの部屋の灯りが見えんくて
なんかあったんかなって焦って家に入るんやけど
玄関には、○○が普段履く小さな靴は見当たらん


電気をつけると目に入る時計は
日が変わるまでの時間が少ないことを示しとる



遅なる時はちゃんと連絡がくるから
いつまでも連絡がつかんこの状況に不安を感じて


『もぉ待ってられへん、』


車の鍵を掴んで玄関のドアを開けると
目の前に、ビショ濡れの○○が居った


驚きながらも、大急ぎで風呂場に押し込んで、
酷くなった靴ずれに絆創膏わ貼って、
風呂入るように促してからリビングに戻る



風呂から出てきた○○の目は、
ちょっと見ただけで
泣いたんやなって分かるくらい腫れとって



『こっちおい』



そう両手を広げると
ゆっくりと腕の中に入った○○を
普段より少し小さく感じた体を
ギュッと抱きしめた



『疲れたやろし、
顔も見えへんからとりあえず座ろか』


そう言ってソファーに座ると
さっきまで遠くから見つめとるだけやったウチの子達が、
足元にちょこんと座った



『ちょっと俺の話聞いて欲しいねんけど、』


その言葉に反応して真剣な顔でこっちを見つめた○○




『がんばれって言葉あるやん』


そう話を始めると、コクんと頷いた○○


『あの漢字ってさ、』


そう言いながら近くにあった紙とペンを取り出して


こう書くやん?そう言いながら
"頑張れ"と書く



『でも、こうも書くんよ』


そう言いながら書いたのは"顔晴れ"の文字


俺の言いたいことを上手く読み取れやん○○は
?マークを頭に浮かべとるみたいやけど


『この"頑張れ"はさ、
なんか1人で我慢しやなあかん気がするやん?
それやとさ、上手く笑えやんくなると思わへん?』


○○の顔を見ながらゆっくりと話す



『でもさ、こっちの"顔晴れ"って
顔が晴れるようにって意味やろ?
要するに笑顔になるってことやん?』


俺なりの言葉で


『もちろん、この"頑張れ"も必要な時もあるやろうけど
それで笑顔が無くなるくらいならさ、
大半の"頑張れ"って、
こっちの"顔晴れ"でええと思うねん』


ちゃんと伝わるように



『○○は、たまに頑張り過ぎちゃう時あるからさ
"がんばる"って言葉には
こういう意味もあるんやなって事を伝えたかったんよ』


1人で抱え込んでしまうのは分かってんねんけど
それでもやっぱり頼って欲しいし、
1人で抱え込むのって苦しいし辛いからさ
やから、言葉だけでも支えられたらなって思ってるんよ






やから"顔晴れ"の意味忘れんといてな

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