あなたside
「俺ばっかやなって」
そう言った彼に、ちょっとだけ腹が立った
こっちがどんだけ頑張っとるか、
私だけが求めるんやなくて、
大毅にも求めて貰えるようにって
普段自分から手繋がんのも、
仕事のこと言わんのも、
仕事で行けやんって思っても、
急いで終わらせて突然会いに行っとんのも
全部、毎回しとったら当たり前になるけど
"たまに"やったら、
そのたまにを求めてくれるんやないかなって思って
手繋ぎたくても、カッコよかったって言いたくても、
急ぐから待っとってって言いたくても我慢して、
その、"たまに"のために頑張っとんのに
そんなん言われたんがちょっとムカついたから
ワザと耳元で
『ウチの方が好きじゃアホんだら』
そう言って
照れ隠しのためにあっかんべーってした
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!