第4話

特権 〜末澤〜
1,462
2021/02/28 11:06


あなたside




『ふぅー、』



今日は久々の残業で


上司に頼まれた資料の作成を終えて


溜息をつきながら天井に向かって手を伸ばす




会社を出るために支度をすると


スマホのディスプレイに映し出された


ある人からの通知


誠也
今日、予定より早く終わりそう
誠也
仕事の都合良かったらそっち行ってもええ?


10分ほど前に送られて来ていたメールには


嬉しい知らせが
あなた

ごめん
今、仕事終わった

あなた

今から帰るから、それで大丈夫なら会いたい


胸が鳴るのを抑えてメールを送ると


すぐに既読がついた

誠也
じゃあ行くわ


その返信を見て、気持ちが高まる


ちゃんと会えんの2週間ぶりとかかなー


なんて考えながら会社を出て、


駅の方向に歩き始めると


急に携帯が鳴った






『誠也?なんかあった』


「なんかあった?やあらへんわ

どこ行くつもりやねん」


『え?どこって駅』


「はぁー、

やーかーらー」







そう言われて音声が途絶えたかと思ったら


知ってる香りに包み込まれたと同時に



「彼氏が迎えに来とんのにどこ行くねん」



と聞き覚えのある声が聞こえた






『えっ、なんで居るん?』



と勢いよく振り向くと



「いって!」



そこまで身長差のない彼の顎に頭があたる



『あっ、ごめん』



と咄嗟に謝ったけど


彼の目はご機嫌ななめで



「彼氏が迎えに来るのに

早く会いたいから以外の理由でもある?」



って少し怒りながら言った彼



『あるかもしれへんやん』



と少し言い返して見たけど



「俺にはあらへん、

ほら行くで」



と手を引かれる



「乗って、はよ帰ろや

ちょっとでも一緒に居りたい」



そう少し耳を赤くしながら言った彼は


よく言われる聖夜様とはかけ離れていて


こんな彼を知ってるのは私だけがええなー


なんてって思ったりする。





「まだ寒いな」



なんて言いながらサラッと


ブランケットを渡してくれるのは


ちょっと聖夜様っぽいのかもしれないけど




でもきっと、


今こうやってそばに居られるのは私の特権だから、


しっかりと離さないようにしないとなって思った。


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