あなたside
「幸せやなぁ、」
久しぶりのデート、
まぁ、仕事の都合で夜になっちゃったけど
近くの海までドライブに
昼間なら多くの人が通るこの場所も
この時間だと人気が無くて、
2人だけの空間と錯覚してしまう。
コンクリートの塀に腰掛けて
月や星が反射する海を眺めていると
月へと呟くようにそう言った彼は
そのまま私の手を握った
『どうしたの?急に』
「別に急やないで、
○○と居る時はいっつも思っとるで」
普段、天然やバカと言われてる彼は
なんの前ぶりもなく、平気でこういう事を言う
そのせいで、
こんなことを言われると思ってない私は、
彼の発言に毎度キュンとさせられて
心臓に悪いんじゃないか、なんて考える
「俺な、朝が好きやねん」
『え?』
急な話の展開に驚くと
「え?」
と、俺なんかおかしな事言った?
そう言いたげな表情を見せる
なんでもないよ、そう言うと
話の続きが始まる
「普段なら俺より早く起きとる○○が
起きた時に横に居って寝顔見れたら
その日はなんかええ日な気がするし、
でも逆に、
起きた時に○○が作った
朝ごはんの匂いがすんのも好きやし
○○が仕事行くためにメイクする時も、
俺が知らん○○の世界をちょっと見れた気して嬉しいし」
彼なりの、と言うべきなのか
独特な表現の仕方で朝が好きな理由が語られる
「あ、1つ忘れとった」
『ん?』
いくつかの理由の後、
何かを思い出した彼はそう声を上げる
「俺より○○が先に家出る時、
俺が「行ってらっしゃい」って見送ると
ドア閉まる前にピースするやん?
俺あれ好きやねん、
なんか.....、ん〜、
俺が世界平和にしたった感?
めっちゃええ事した気分なんねんなぁー」
と、また彼の独特の表現方法が飛び出した
『なにそれ笑』
そう笑ってみると
「え、俺結構ええ事言ったと思ててんけど」
って真顔で言うから、もう笑いが止まらなくて
静かな海辺に私の笑い声が響いた
『ねぇ、崇裕?』
「ん?」
私も、あなたと居る時間が1番幸せだよ
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。