第13話

人生の先輩、~神山~
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2021/03/12 10:31



あなたside





「ちょっと綺麗事に聞こえるかもしれへんねやけど」




そう前置きをした彼は


私の背中に、トン、トン、


と、一定のリズムで手を当てる




「この前、もうちょっとで○○も卒業やなーって考えてたら

卒業って具体的になんなんやろって、

まぁもちろん、何となくのことはわかってるんやけど、

でも、ちゃんとした意味は知らんなーって思ってん」




そうゆっくりと話す彼は、


きっと、私が話についてこれるように気を使ってくれてて




「やから、辞書で調べてみたんよ

"卒業"って、

そしたら、2つの意味が書いてあって、

1つ目は、俺らもよく知ってる

"学校"の全課程を終えることって書いてあって

まぁそれは、なんていうかさ..

ん〜、普通?って言ったらええんかな」




ゆっくり、彼なりに言葉を選びながら話してくれる




「でな、もう1つの方は...」




そう少し言葉をためた彼に




『うん、』




って、相槌を打つ


すると、少し安心したように笑った彼は、




「ある段階や、時期を過ぎたことって書いてあったんよ」




と、話を続けた




「確かに今は、友達と離れたりすんのが辛いやろし、

寂しいなって思うこともあると思う、

実際、俺もそうやったしさ、」



『ん、』



「でもさ、2つ目の意味を知った時にな

確かにそうやなって、」



「辛いし、寂しいけど、

きっとそれは次に進むための過程で、

自分が成長するには必要なもんなんかなって」



『うん、』



「やからさ、

今はネガティブな感情なんかもしれやんけど

そのうち、ポジティブな感情になると思うから

やから、あんま泣かんといて欲しいなって」



『ん、』




彼の言葉にしっかり耳を傾けながら、相槌を打つ




「バカらしく聞こえるかもしれやんけど、

○○が泣いとると、なんか嫌やねん

俺も痛くなってくるからさ、

もちろん、辛いことがあったら

全然泣いてくれてもええんやけど、なんかさ...

なんか、俺の知らんことで泣いとんのはさ、

なんか悔しいっていうか、

あ〜、もぉぉー



なんていってええかわからんけど、

嬉しいことやのに泣かんといてや、

○○の笑顔が見たいからさ、な?」




そう言って私の顔を見つめる彼は、いつもより幼く見えた




『ありがと、』




そう言って、腕の力を込めると




「全然、

こんなことやったらいくらでもしますよ」




って、彼の腕にも力が入る


すると、少しずつ溢れるものも止まり始めた






「あっ、」




何かを思い出したように声をあげた彼




「でも無理に笑わんといてな、

その...、さっき言った事とは矛盾しとるけどさ

苦しい時とか、辛い時は、ちゃんと頼って欲しいし、

俺も頼って貰えるように頑張るからさ、

そんときは、ちゃんと言って欲しい

俺も頑張って気づけるようにするからさ、」




と、慌てて言った彼




大丈夫だよ、


ちゃんと分かってるよ、



そう伝えるように、もう一度抱きしめた





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