桐山side
『なぁ、なんなんこの匂い』
仕事が終わって帰って来た○○
普段通りにお疲れ様の意味を込めて抱きしめる
普段ならお気に入りの香水の匂いがするのに
俺の元へ漂ってきたんは
○○からは想像も出来やんようなゴッツい匂い
その匂いにゆっくりと腕を解き、
一気に○○を壁に押し付ける
『これ、なんの匂い?』
そう問いかけると
「なんのこと?」
と返した○○
『男でも出来たんか?』
どう考えたって、明らかにこの香水は男モノで
それが○○の体に纒わり付いとる
「何言ってんの?照史が居るやん」
『じゃあなんや、香水の好みが変わったんか?』
「今日の商談相手が香水の匂いが強い人やったから
それが移ったんやない?」
俺の追求をスルりとかわす○○の余裕に腹が立つ
『なぁ、自分の状況分かっとる?』
彼女から香るその余計な匂いは
いとも簡単に、俺の醜さを引き出す材料になる
キレイな曲線に沿った布を普段より乱雑に剥ぐと
少しずついつもの香りが戻り始めた
はずだった
首元に擦り寄った時、
名残惜しい
と言わんばかりに張り付いた香りが鼻を掠めた
その時点で
「ちょ、まっ.........」
彼女の制止など届くはずもなく
○○の体は桜の散るこの時期のように
綺麗な花びらを纏った
なぁ、この香りはどこの誰なん?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。