中間side
合鍵を使って玄関を開けると
一気に煙たい匂いが漂う
『またか、』
そう呟きながら入ると
月明かりに照らされた○○の姿が見えた
「来たんや」
彼女のゆったりとした話し方は、
大人の余裕を感じさせる
『ちゃんと、今から行くってメール入れたで』
「あー、見んの忘れてた」
そう言いながら灰皿で火を消す
『なぁ、こっち』
そう言って
ゆっくり近づいてきた○○を腕の中に閉じ込める
「匂い服に移んで」
そう言いながら何気に俺の服を掴む
『○○』
俺の呼び掛けに顔をあげた彼女、
唇を重ねると、煙草特有の香りが口の中に広がる
『グフっ、ごホッ.....』
その煙たさにやられて咳き込むと
「淳太って、アホなん?」
そんな一言が飛んできた
「自分が煙草ムリなん分かってんのに、
煙草吸ったばっかの人とキスしたら
咳き込むに決まってるやん」
『しゃーないやん、したなってん』
「それがアホや言うてんねん、
そもそも、煙草ムリ言うてんのに
なんで吸う人と付き合おうと思うかね」
いかにもアホやなぁって言いたげにそう言った○○
俺にも分からへん、
昔から煙草の匂いは嗅いだだけで気分悪なるし
煙草は、吸う本人より、周りの方が害があるって聞いた時は
吸うのは自由やけど、嫌やなぁって思ったし
やから吸う人と付き合うなんて思てなかった
やけど、あの日
初めて会った時、一瞬で堕ちた
普段は煙草の匂いがするからと避けていた居酒屋に
望と照史に引き連れられて入ると、
店内に1人、カウンターに座る女の人が居って
それが○○やった。
可愛いって言うより綺麗で、一気に惹き付けられた
煙草を吸いながら、グイッと酒を飲む○○から目が離せやんくて
思わず声をかけた、
今考えたら完全なナンパやな
そっから必死やった、
大人な○○にどうやったらこっちを見て貰えるか
まぁ結局、振り向いて貰えたんかは分からんけど
それでもとりあえず、○○の隣は俺になった
煙草は今でも嫌いやけど、
○○が吸ってる限りは諦めるしかないし、
彼女がそばに居るんなら、まぁええか、
って、思えるぐらい俺は○○に溺れとる
あ、俺ええ事思いついた
『なぁ、俺の子供産んでや』
そしたら、○○は子供んために煙草辞めるやろ?
んで、俺には子供できるし、煙草の匂いも無くなる
ええ考えやと思わん?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。