…よし、これで繋がったはずだ。

みんな、聞こえる〜？

よし、じゃあ報告の時間だね。

家の骨組みは木で作られてる。

一般的な家は２階はなく、一階に台所、居間、寝室など全て揃っている。

ベッドは鹿とか、大きい動物の毛皮を布にして使ってるね。枕は固くて寝にくいな〜。

風呂とかはなく、入浴は井戸から水を汲んでタオルに湿らせて擦ってる。頭洗うのも同様だ。

石鹸は動物の油から作ってるよ。なんか洗い心地が良かったね。

そうだね、なんだか体についてる悪いものが一気に取れた感じがするよ。

じゃあこの家のおばさんに頼んでみるね。

あ、そうだ。みんなに気をつけてほしいことがあって…。

俺達のいる村に、行商人が来て話を聞いたらやべぇ事が発覚した。

ほら、フィル達と再会したあと、農園の鬼達は逮捕されただろう？

その鬼達が脱獄して、ムジカ達と私達を襲おうとしてるの。

本当かは分かんない、でも本当だったら危ない。

野良鬼に太刀打ち出来る追手の鬼も捕まっているけど、彼らもみんなを狙っている。

牢や見張りを倒すことは策さえ講じれば、容易に出来る。

人型の姿をしていなくともあの知能、あの強さ、改良をされて作られた鬼なのかもしれない。
奴らの力は俺達にとって未知数だ。

ソンジュに頼る事も考えたんだけど、農園の鬼達がバラバラに行動してる事も考えられるし、その度に追手達を倒していっても、みんなを襲う事ができると思う。

なんていうんだろ、…漁夫の利みたいな？

漁夫の利なんて言葉よく知ってるなお前。

５歳児じゃないってば！

まぁ、そういうことだ。
ママ、シスターと年長者を各プラントに10人ずつ配置してほしい。シスターも一応銃は使えるだろ？

みんなを守れる環境を作って欲しい。

トーマ！

お前ら、弓は使えたっけ？

…上等だ、お前らも、ハウスを守っていてくれ。追手は鳥やうさぎよりはるかにデカい。動きも素早いが、お前らなら出来るだろ。

みんな、ハウスや家族を守ることも大事だけど、まずは自分の事を考えて戦ってほしい。

行商人の話が本当かは分かんないけど、万一のために常に警戒はしていてほしいんだ。

また何か情報が入ったら、また通信するよ。

じゃ、みんなよろしくね。
通信を切るよ。

ムジカ、戻ったぞ。

あら、おかえりソンジュ。
…グランマからの返答が来たわ。

なんて返ってきた？

ハウス拡張計画、承諾…。

そうか、…なあムジカ。どう思う？

？　何が？

エマとレイとノーマン。あの３人が集落にいるらしいが、行商人から噂を聞いたとよ。

……噂？

あぁ、農園の元職員が脱走を図り、農園のシステムそして食用児（子供達）の奪還を計画している…とな。

ついでに言うとムジカ、お前の王権も剥奪する気でいるらしい。本当かどうかは定かじゃないがな…。

本当だったら厄介よね…。

あぁ、まずは量産農園を取り戻していくだろうな。あいつらは意志が全く無い、抵抗もしない。すぐに奪われてしまうな。

ええ、……そうね。

それをみんなに公表するとなると、混乱が起きる。それを私が防がないといけない、エマ達を守る環境が作れなくなるわね…。

どうやら困っているようだねぇ、ソンジュ、ムジカ…。

兄上…。

農園を廃止しただけでは、まだ課題が残っているな…。

ええ、量産農園の子供をエマ達に預けても、何を勝手にしでかすか分かりかねます。
それに、呼吸器を外してしまっては生きることも出来なくなります。
最悪、…殺処分になるのでしょうか。

でもそうなったら、エマが納得しないわよね。

もし殺処分なんてことになってしまったら、せめて儀程は施してやろう。あいつらも人間、命なのだからな。

そうね。

さて、俺はそろそろ行く。

帰ってきたばかりだというのに、どこに行くのかねソンジュ？

…政治を我々に押しつけた兄上とは違って、私は忙しいのです。ではまた。

……素っ気ないねぇ。