第13話

ダブルスーサイド4
577
2020/11/08 15:19
ころん
ころん
さとみくーん!!!
おはよー!!!
さとみ
さとみ
っはぁ〜〜〜…
ころん
ころん
は?!そんなでかいため息つくなよ!
さとみ
さとみ
ほんっとお前は毎日毎日うちに来やがって…
ころん
ころん
いーじゃん!僕ら友達でしょ?
さとみ
さとみ
ころん
ころん
おーいなんか言えや
ころんと出会って20日、こっちの世界軸に来てから20日。
数日で調査が終わるような簡単な仕事で生活費を稼ぎ過ごす毎日の中、ころんは一日たりとも欠かさず事務所へ通ってくる。
まあ毎日来られたら流石に面倒に思う時もあるが、一緒にいると楽しいもんでころんが来るのを少し楽しみにしている自分もいる。
こんな調子で、元の世界のことは思い出すのも少なくなってきた頃。
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1924年5月23日 午後24時
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さとみ
さとみ
ふぁ〜あ…
さとみ
さとみ
っくぅ〜〜…やっと終わったぁ…
仕事の内容を備忘録へ記し終わると、時間は12時を回っていた。
さとみ
さとみ
日付超えちゃったか〜…さ、早く寝よう…
ドンドンドン!!!
さとみ
さとみ
ッ?!?!?
さとみ
さとみ
なんだなんだ?!
ころん
ころん
さ…っさとみくん…ッ
ころん
ころん
あけて…!!!
さとみ
さとみ
ころん…?!
ガラララッ
ガバッ
さとみ
さとみ
うおっ?!?!
いきなりころんに抱きつかれ、扉のヘリを掴む。
さとみ
さとみ
どうしたんだよ!こんな夜中…
さとみ
さとみ
に…
ころん
ころん
ゔっ…く、ひぐ…ッ
ころんは、口から、頭から、血を流して泣いていた。
さとみ
さとみ
…はああああっ?!?!
さとみ
さとみ
ちょ、お前どうしてそんな血…!!!
さとみ
さとみ
医者は…あぁもう開いてねぇ…!!
さとみ
さとみ
すまん、ちょ…ちょっと待ってろ!!
机や棚をかき分け、包帯や絆創膏を慌ただしく探す。
さとみ
さとみ
くそ…どこだ…?
ころん
ころん
…さとみくん
さとみ
さとみ
なんだっ?!
ころん
ころん
…死んでもいい、かな
ピタッと手が止まる。
振り返って見たころんは、泣きながら笑っていた。
ころん
ころん
もう僕、生きるの嫌になっちゃった
さとみ
さとみ
…は?
さとみ
さとみ
何言ってんだよ…?
声が震える。
ころん
ころん
…父さんとね、引き継ぎのことで大喧嘩してさ
ころん
ころん
終いには包丁投げてくるわ手加減なしで殴ってくるわで笑
ころん
ころん
この有り様
笑って開いた口は中が血で真っ黒だった。
ころん
ころん
「引き継がないならお前なんか殺してやる」だって
ころん
ころん
それで、逃げてきたんだ
ころん
ころん
父さんに殺されるくらいなら自分から死んでやろうと思ってさ
ころん
ころん
ここへ来たのはね、別れの挨拶
穏やかに笑ってころんは言う。
ころん
ころん
さとみくん、今までありがと
絞られた喉。回らない頭で必死に出した言葉は、
さとみ
さとみ
…っお、俺も…死のう、か
ころん
ころん
…え?
ころんの現状への悲しみより、自分の元へ来てくれたことへの嬉しさの方が勝ってしまったようだ。
目の前の想いを寄せている相手をどうにか1人にしないようにと脳を動かす。
さとみ
さとみ
1人で死ぬのは、怖いだろ…?
ころん
ころん
え…や、そんなさとみくんが…
さとみ
さとみ
俺はいいんだよ
さとみ
さとみ
どうせ家族も恋人もいないし、友達だってお前くらいだ
ころん
ころん
でも…
さとみ
さとみ
ころん
さとみ
さとみ
死ぬんだろう?
ころん
ころん
っ…
ころん
ころん
…いいの?
震える瞳に優しく笑う。
さとみ
さとみ
…いいんだよ
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船乗り場から海面までは1mほどある。
そこから身投げしようと2人で決めた。
手を繋いで、地面の端に立つ。
ころん
ころん
さとみくん
さとみ
さとみ
ん?
ころん
ころん
僕もね、さとみくんが好きだったよ
さとみ
さとみ
…そっか
「女の子に興味はないかな」
ころんの台詞。なるほどな。
さとみ
さとみ
さ、行こうか
ころん
ころん
…うん
2人で同時にくうへ足を踏み出し、ボチャンと青に沈む。
不思議と苦しくない。
その時、突然元の世界の記憶が再生された。
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「何故か女性の方の遺体が見つかっていなくて…」
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さとみ
さとみ
(…あぁ)
水面の月がゆらゆらと揺れている。
さとみ
さとみ
(心中の相手は俺だったのか)
最後の泡を、小さく吐いた。
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おはようございます、進展ありましたか?
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ああ、おはようございます!それがですね…
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相手の遺体、見つかったんですよ
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お、やっとですか。どちらの方でした?
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それが…本当に不思議なのですが…
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…桃里探偵で…
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…なんですと?
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桃里さんはつい一昨日に調査に来ていたでしょう
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そうなんです、本当に我々も不思議で堪らなくて…
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しかし遺体の状態から見ても経過時間は同じで…
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どうして、でしょうか…
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Fin
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