第6話

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914
2020/08/15 21:00
空気を読まない作者
空気を読まない作者
怖い話でもしましょうか。夏ですね。
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2004年1月8日22時00分

新宿駅
莉犬
莉犬
るぅとくんばいばーい!気をつけてね!
るぅと
るぅと
莉犬も気をつけて!
莉犬
莉犬
うん!じゃーね!
莉犬が見えなくなるまで手を振る。時々振り返って「まだ振ってる笑」というように莉犬が笑う。
見えなくなったらくるりと向きを変え、いつものように改札を通って電車に乗る。
るぅと
るぅと
(今日の電車は比較的空いてるな…)
それもそうか。いつもは18時の帰宅ラッシュピークの時間に帰るんだし。
今日は莉犬の家で動画を撮った。ただ、やったゲームが思った以上に難しくて手こずってしまい、こんな時間になったのだ。
22時代になると残業を終わらせたサラリーマン達がちらほらと居るくらいだった。
乗車口の横にある端の席に座り、壁にもたれ掛かる。
るぅと
るぅと
(何時間もゲームしたから疲れたな…最寄りまで15分くらいあるしちょっと寝よう…)
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2004年1月8日22時30分

中央線?
るぅと
るぅと
ん…
るぅと
るぅと
…はっ!
るぅと
るぅと
(今どこだ?!?!)
寝過ごした…!!どんくらい寝たんだ?!
バッと顔を上げると、モニターには広告が流れていて次の駅名が書いていなかった。
急いでスマホを取り出してマップを開く。
るぅと
るぅと
ええっ…?
スマホには「圏外」の文字が光っていた。
時刻は22時30分。
るぅと
るぅと
(30分ってことは最寄りから15分オーバー…戻れる距離だな)
家に帰れる距離だと推測し、安心する。
るぅと
るぅと
(次の駅で降りよう)
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2004年1月8日22時55分

中央線?
るぅと
るぅと
(おかしい…)
目が覚めてから25分。電車は何処にも止まる気配が無く、永遠とトンネルの中を走り続けている。
るぅと
るぅと
(アナウンスも流れないし…)
運転席を覗いてみるか…
電車の中をスタスタと歩いていき、端の車両の運転席を見る。
るぅと
るぅと
あれ…?
黒いカーテンがかかっており、中はどこからも見えなかった。
るぅと
るぅと
寝てるとかない、よな…
不安に思いつつも席に座る。圏外なので友達にも連絡が取れない。
るぅと
るぅと
そういえば、電車の中誰も…
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ピンポンパンポ-ン
るぅと
るぅと
?!?! ビクッ
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まもなくきさらぎ、きさらぎ
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お出口は右側です
るぅと
るぅと
…びっくりした…
急に流れるなんて…
るぅと
るぅと
(やっと駅に止まる…!)
ここで降りて急いで戻ろう…
程なくして駅に止まった。ドアが開き、電車から降りる。
2004年1月8日23時

きさらぎ駅
るぅと
るぅと
なんだ、ここ…
るぅと
るぅと
きさらぎ駅…?
聞いたこともない駅名だ…
はたまた誰もいない駅を通り、時刻表を探す。
るぅと
るぅと
時刻表がない…?!
るぅと
るぅと
困ったな…
外から虫の音が聞こえるくらいで人の気配がしない。僕以外に誰も居ないみたいだった。
るぅと
るぅと
(不気味…)
るぅと
るぅと
(とりあえず一旦出てみるか)
ビジネスホテルにでも泊まろうと駅を出たが、その思いは一瞬で砕けた。
るぅと
るぅと
…?!?!
何も無い…?
駅の外は草原が永遠と続き、人の家すら1つも見当たらなかった。
るぅと
るぅと
嘘…そんな田舎…?
改めて携帯を見ると電波が通っていた。
るぅと
るぅと
っ…!!!
急いで莉犬に電話をかける。
RRR…
莉犬
莉犬
もしもし?るぅとく
るぅと
るぅと
莉犬ッ!!!!
莉犬
莉犬
な、何?笑 どーしたの?
るぅと
るぅと
ゔ…莉犬ぅ…
莉犬
莉犬
ど、どーしたの?!笑 な…泣いてる…?
るぅと
るぅと
莉犬と別れてからいつもの電車乗ったら寝過ごして…そしたら全然電車が止まんなくて…
るぅと
るぅと
やっと止まった駅に降りたんだけど聞いたことも無い駅で、しかも人いないし駅の周り何にもない…
莉犬
莉犬
ええ?なにそれ…。なんて駅?調べるよ
るぅと
るぅと
えっと、きさらぎ駅って名前らしい…
莉犬
莉犬
きさらぎ駅…きさらぎね、ちょっと待ってて
カチャカチャとパソコンを操作する音が聞こえる。
莉犬
莉犬
あれ…?
るぅと
るぅと
ど、どしたの?
莉犬
莉犬
そんな駅ないよ?
るぅと
るぅと
え…?
莉犬
莉犬
ひらがなできさらぎ?
るぅと
るぅと
そうだよ…?
莉犬
莉犬
うーん…漢字で如月なら遠いところにあるんだけど、ひらがなでは見当たらないなあ…
るぅと
るぅと
うそっ…?!
莉犬
莉犬
俺だけじゃなくてみんなとも電話繋げてみるね
程なくしてみんなの声が聞こえる。
ななもり
ななもり
もしもーし
ジェル
ジェル
るぅとー大丈夫かー?
さとみ
さとみ
おーい
ころん
ころん
聞こえる?これ
莉犬
莉犬
もしもし?るぅとくん今繋がってるよ
ななもり
ななもり
んで、どうしたの?
かくかくしかじか
ころん
ころん
ええっ?!何それ?!
ジェル
ジェル
きさらぎか…無いな
さとみ
さとみ
名前見間違えてんじゃね?
るぅと
るぅと
いや、ちゃんと「きさらぎ」って名前ですよ!
ななもり
ななもり
うーん…るぅちゃん、次の駅とか前の駅は書いてないの?
るぅと
るぅと
あっ!!えーと…
るぅと
るぅと
…書いてない、です…
ななもり
ななもり
そっかぁ…
さとみ
さとみ
駅の周りとか何にも無いんだろ?
るぅと
るぅと
そうなんです…人の家ひとつ無くて…
さとみ
さとみ
そりゃ困ったな…野宿か線路を歩いて帰るかだな
るぅと
るぅと
ええ?電車来たらどうするんですか…
さとみ
さとみ
でも時刻表も無いんじゃ電車がいつくるか分かんないし…もうこの時間じゃ普通は終電過ぎてるけどな
ジェル
ジェル
るぅとまさか、あの世の駅に行ってたりして…
莉犬
莉犬
…ジェルくんその冗談はキツいよ
ジェル
ジェル
いや、冗談じゃなくて。ほんまに…
ジェル
ジェル
廃駅になってたとしても1つくらい検索で引っかかるやろ。なのに見つからないわ駅の周りに何も無いわ、無人駅だわ…
るぅと
るぅと
やっ…辞めてくださいよ…
ころん
ころん
まって…?
ころん
ころん
きさらぎって、漢字で「鬼」とも書けるらしいよ…
ころん
ころん
るぅとくんがいるのは「鬼駅」なんじゃ…
るぅと
るぅと
…僕歩いて帰ります
莉犬
莉犬
えっ?!駅で待ってた方がいいんじゃない…?!
るぅと
るぅと
でも僕これで"そっち"に帰れなかったら…
るぅと
るぅと
永遠に…このまま…
莉犬
莉犬
るぅと
るぅと
ちょ、ちょっと線路に降りてみます…
るぅと
るぅと
たしかトンネルを通ってきたので…
ジェル
ジェル
あ、トンネルなら入るところにトンネルの名前があるはずやで!
るぅと
るぅと
ほんとですか?!
タタッと走ってトンネルを見渡す。
るぅと
るぅと
あっこれ…かな?「伊佐賀トンネル」らしいです
ジェル
ジェル
伊佐賀な、調べてみるわ
さとみ
さとみ
…じゃあるぅと
さとみ
さとみ
トンネルの中に入っていけ。
るぅと
るぅと
…はい
ジャリ、と線路の石を踏みつける。
大丈夫だ、僕はまだ生きてる
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おーい
るぅと
るぅと
ビクッ
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線路に入っちゃ、危ないよ
るぅと
るぅと
へっ…?あ、す…すいません
スッ
るぅと
るぅと
?!?!?!
莉犬
莉犬
るぅとくんどうかした?!誰と喋ってるの…?!
るぅと
るぅと
えっ…あ…
涙が勝手に出てくる。ガタガタと震えだし、気づけば僕は走り出していた。
るぅと
るぅと
はっ…はっ…!!
莉犬
莉犬
るぅとくん?!ねぇ大丈夫?!
ななもり
ななもり
るぅちゃん!!
ころん
ころん
るぅとくんどうしちゃったの?!
るぅと
るぅと
あっ…す、すいませ…っ
莉犬
莉犬
ちょ…一旦立ち止まってみたら?!
るぅと
るぅと
う…あ、わ…分かりました…
全速力で走ったのは数年ぶりで、肩が激しく上下する。
ななもり
ななもり
どうしたの…?
るぅと
るぅと
か、片足のおじいさんが遠くの後ろから「線路に入っちゃ危ないよ」って言って消えたんです…
ななもり
ななもり
えっ…?!
ころん
ころん
…るぅとくんそれなんで「おじいさん」って分かったの?遠くに居たんだよね…?!
るぅと
るぅと
…ぁ
ドンドン…
るぅと
るぅと
っ?!?!
ピ-ッ…
るぅと
るぅと
…なんか
莉犬
莉犬
ん?
るぅと
るぅと
太鼓の音みたいな…お祭りの音みたいなのがするんですけど…
さとみ
さとみ
るぅと!!!!!
るぅと
るぅと
っは、はいっ?!
さとみ
さとみ
走れ!!!絶対に振り向くな!!!
るぅと
るぅと
えっ…?!は、はいっ…!!
自分を奮い立たせてトンネルの中を突っ走る。
るぅと
るぅと
どんどん音が近づいてるんですけど…!!
さとみ
さとみ
急げ!!とりあえずトンネルを出ろ!!
ころん
ころん
な、何が起こってるの?
莉犬
莉犬
…多分だけど
莉犬
莉犬
その音に追いつかれたら終わりなんだろ、るぅとくん
ころん
ころん
い、嫌だ…るぅとくん生きて帰ってきてよぉ…
るぅと
るぅと
(ころちゃん…泣いてる…)
僕のせいでみんなに迷惑かけて…
るぅと
るぅと
ごめんなさい…っ
るぅと
るぅと
(眩しっ…)
気づけばトンネルを抜けていて、音も消えていた。
るぅと
るぅと
…よ
るぅと
るぅと
良かったぁ〜…
るぅと
るぅと
トンネル出ましたぁ…
さとみ
さとみ
ふ〜…間一髪だったな…
さとみ
さとみ
昔から黄泉よみの国、あの世に連れていかれる時って遠くから祭りみたいな音が近づいてくるって言うんだよな
さとみ
さとみ
ちょうどこの間テレビで見て面白いなって思ったんだけど…
さとみ
さとみ
てか、今のるぅとの雰囲気は電話越しにもやばいのが伝わってきたしな…
るぅと
るぅと
はぁ、はぁっ…
さとみ
さとみ
ごめん、疲れた?
るぅと
るぅと
や…大丈夫です…っ
るぅと
るぅと
…あ
さとみ
さとみ
ん?
るぅと
るぅと
携帯の充電が…
ころん
ころん
えっ?!るぅとくんもう電話切った方がいいんじゃない…?!
ころん
ころん
あ、でも心配だし…
るぅと
るぅと
…一旦切ってみます…
るぅと
るぅと
みんなありがとうございました…随時メッセージ送るので…
ななもり
ななもり
るぅちゃん
るぅと
るぅと
はい?
ななもり
ななもり
…気をつけて、戻ってきてね
るぅと
るぅと
…了解です
プツッ
ツ-ッ、ツ-ッ…
るぅと
るぅと
はぁ…
一応トンネルは抜けたから、あとは線路にそって歩いて帰れば…
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君、大丈夫かい?
るぅと
るぅと
へっ…?!
パッと前方を見ると、農家のような格好をしたおじいさんが立っていた。
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こんな時間に線路でなんかしてたの?
るぅと
るぅと
あ、えーと…
かくかくしかじか
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それは大変だったねぇ…私の車があるから、駅まで送りますよ
るぅと
るぅと
ほ…ほんとですか?!
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この車。ほら、乗りなさい
るぅと
るぅと
ありがとうございます…!!
安心で涙が零れそうだった。
おじいさんの車に乗りこみ、みんなにメッセージを送る。
るぅと
るぅと
「ここら辺に住んでるらしいおじいさんが車で駅まで送ってくれることになりました…!!帰れます…!」
ころん
ころん
「良かったぁ…!」
莉犬
莉犬
「ほんと?!」
ジェル
ジェル
「るぅと…それは生きてるおじいさんか…?」
るぅと
るぅと
「え…そ、そうだと思いますけど…」
るぅと
るぅと
…あれ?
るぅと
るぅと
(ここ…山、だよな…?)
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…ま…さま…え…にえ
るぅと
るぅと
?!?!?!ビクッ
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ブツブツブツ
るぅと
るぅと
ヒッ…?!?!?!
るぅと
るぅと
「あ…あの、おじいさんがなんかブツブツ言ってて…!どんどん山の方に入っていくんですけど…?!」
さとみ
さとみ
「は?!それ絶対やばいって!!」
ななもり
ななもり
「るぅとくん!!逃げて!!」
るぅと
るぅと
…っ
るぅと
るぅと
…も、ここら辺で降ります!!駅まで歩くのでっ…?!
ガチャッ
るぅと
るぅと
(ドアが開かない…?!)
ヌチャ
るぅと
るぅと
え?
車の手すり部分には血と髪の毛のようなものがベッタリとついていた。
るぅと
るぅと
…う
るぅと
るぅと
うわああああ!!!!!
ガチャガチャガチャ!!!
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…ッチ
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うル、サィ
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髮ィ荵槭>縺ョ縺溘a縺ョ逕溯エ?r謐輔∪縺医◆縺薙l縺ァ螟ゥ縺ォ縺?¢繧
ピッ
「ボイスメモを録音します」
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逕溯エ?r謐ァ縺偵k莠疲怦陜ソ縺?函雍?□谿コ縺励※縺励∪縺
るぅと
るぅと
たすっ…たすけッ…!!
ゆっくりとおじいさんとは似ても似つかない形になった化け物が近づいてくる。
るぅと
るぅと
うわあああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!
「ボイスメモを送信します」
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るぅと
るぅと
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