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2004年1月8日22時00分
新宿駅
莉犬が見えなくなるまで手を振る。時々振り返って「まだ振ってる笑」というように莉犬が笑う。
見えなくなったらくるりと向きを変え、いつものように改札を通って電車に乗る。
それもそうか。いつもは18時の帰宅ラッシュピークの時間に帰るんだし。
今日は莉犬の家で動画を撮った。ただ、やったゲームが思った以上に難しくて手こずってしまい、こんな時間になったのだ。
22時代になると残業を終わらせたサラリーマン達がちらほらと居るくらいだった。
乗車口の横にある端の席に座り、壁にもたれ掛かる。
…
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2004年1月8日22時30分
中央線?
寝過ごした…!!どんくらい寝たんだ?!
バッと顔を上げると、モニターには広告が流れていて次の駅名が書いていなかった。
急いでスマホを取り出してマップを開く。
スマホには「圏外」の文字が光っていた。
時刻は22時30分。
家に帰れる距離だと推測し、安心する。
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2004年1月8日22時55分
中央線?
目が覚めてから25分。電車は何処にも止まる気配が無く、永遠とトンネルの中を走り続けている。
運転席を覗いてみるか…
電車の中をスタスタと歩いていき、端の車両の運転席を見る。
黒いカーテンがかかっており、中はどこからも見えなかった。
不安に思いつつも席に座る。圏外なので友達にも連絡が取れない。
急に流れるなんて…
ここで降りて急いで戻ろう…
程なくして駅に止まった。ドアが開き、電車から降りる。
2004年1月8日23時
きさらぎ駅
聞いたこともない駅名だ…
はたまた誰もいない駅を通り、時刻表を探す。
外から虫の音が聞こえるくらいで人の気配がしない。僕以外に誰も居ないみたいだった。
ビジネスホテルにでも泊まろうと駅を出たが、その思いは一瞬で砕けた。
駅の外は草原が永遠と続き、人の家すら1つも見当たらなかった。
改めて携帯を見ると電波が通っていた。
急いで莉犬に電話をかける。
RRR…
カチャカチャとパソコンを操作する音が聞こえる。
程なくしてみんなの声が聞こえる。
かくかくしかじか
…
タタッと走ってトンネルを見渡す。
ジャリ、と線路の石を踏みつける。
大丈夫だ、僕はまだ生きてる
スッ
涙が勝手に出てくる。ガタガタと震えだし、気づけば僕は走り出していた。
全速力で走ったのは数年ぶりで、肩が激しく上下する。
ドンドン…
ピ-ッ…
自分を奮い立たせてトンネルの中を突っ走る。
僕のせいでみんなに迷惑かけて…
気づけばトンネルを抜けていて、音も消えていた。
プツッ
ツ-ッ、ツ-ッ…
一応トンネルは抜けたから、あとは線路にそって歩いて帰れば…
パッと前方を見ると、農家のような格好をしたおじいさんが立っていた。
かくかくしかじか
安心で涙が零れそうだった。
おじいさんの車に乗りこみ、みんなにメッセージを送る。
ガチャッ
ヌチャ
車の手すり部分には血と髪の毛のようなものがベッタリとついていた。
ガチャガチャガチャ!!!
ピッ
「ボイスメモを録音します」
ゆっくりとおじいさんとは似ても似つかない形になった化け物が近づいてくる。
「ボイスメモを送信します」
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。