麻で出来た肩掛けカバンに、お守りと水筒とパンを入れて家を出る。
少し先で殺人が起きてるなんて嘘のような静かさ。
今日は違う方に行ってみよう、といつもとは別の道を進む。
テクテク
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天使村、悪魔村。
この地域は、そう呼ばれている。
天使村は見た目も住んでる人の心も真っ白な村だ。穏やかで平和な村。
…だった。
僕ら悪魔村の人間が足を踏み入れるまでは。
天使村と対称に、悪魔村は見た目も住んでる人の心も真っ黒な村。言わば犯罪集団が集まって群れを成してるようなものだ。
僕はその村のある家に長男として生まれた。お父さんとお母さんは"狩り"を仕事にしている。
狩りとは、動物の話ではない。
天使村の人間を狩るのだ。
天使村の人間の肉を食べると寿命が100年伸びると言われている。悪魔村の人間はその肉を食べたり、売ったりして収益を得ているんだ。
僕はそんな金儲けの仕方が嫌いで仕方なかった。
同じ人間なのに種族が違うだけで殺人が起きるなんて馬鹿馬鹿しい。それに、なんだか聞いていて不快だ。
僕は天使村の人間に生まれて、天使村の人間として生きたかった。
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気がつけば僕は見たことない草原を歩いていた。
家の周りのような不穏さは無く、ただ青々とした草がどこまでも広がっていた。
村境は横に広がっていて、端の方は何も無いから誰も寄り付かないと聞いたことがある。
この村同士の間では1番平和な場所な気がする。
よっこいせ、と腰を下ろすとどこからかうめき声が聞こえた。
ベンチの裏を除くと、金髪が目に飛び込んできた。
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倒れてた奴をベンチに座らせ、水を与えると突然元気になった。
そうか、天使村の人ってテンション高いんだっけ…
まさかこいつ…僕のことを当たり前のように天使村の人間だと思って話してる…?
だとしたら、天使村の人間はタバコなんて吸わないからタバコ屋もないじゃないか…!
こいつは1度も目を開かない。何も見えないだろ、そんなんじゃ…
こいつが盲目で良かった。
こんな顔見られたら、悪魔村の人間だってバレてしまう。
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2へ続く
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。