さとちゃんが、死んだ。
葬式の帰り道。少し前まで手を繋いで2人で帰っていたのに。
そういえば、あそこでコンビニの帰りに2人で肉まん食べたなぁ…
今考えたらあそこでさとちゃんのこと好きになったのかも。
21歳の誕生日にさとちゃん、バラ21本買ってきくれたっけ。
「21本のバラは真実の愛って意味だよ」って言ったあと、「キザすぎるか笑」って笑った顔が本当にかっこよかった。
日常の傍らにさとちゃんが散っていて、どこを見ても桃色に染まっている。
涙を流すのはこれで最後にする、否、なるんだ。
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さとちゃんは鼻を触りながら寂しそうに笑った。
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前まで桃色に色づいていた頬も唇も、すっかり色が無くなってしまっていた。
俺の初めてはさとちゃんだった。
恥ずかしいような安心したような、色んな感情が入り交じって。それでも確実に俺は幸せだった。
昔のさとちゃんの大きな手で首を締めてくれよ。
…なんて、今はもう白くて弱々しいのに
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パチッ
1人にしてはやけに大きなベッドから起き上がり、ペアの片方の赤いマグカップにコーヒーを入れる。
この日のために昼夜逆転生活をしてきた。
引き出しを開けて、ピンク色の箱を取り出す。
カチッと火がつけて、咥えた煙草に炎を当てる。
煙草の味が少し、甘くなった。
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青黒い海は波1つたてずに静まり返っている。
「治るよ」って言った時も、薬効いてるって笑った時も、鼻ばっかり触ってさ。
堤防の上から1歩前に踏み出す。
体も意識も沈んでいく。最後の意識、口を開いて。
目の前を浮かんでいく泡の、弾ける音がした。
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引用:「さようなら、花泥棒さん」
/メル feat.初音ミク
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。