第19話

『彼』と重なる
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2021/07/18 08:38
パキャ
パキャ
───────!
 パキャの目には───うつ伏せに倒れているファルが写った。
パキャ
パキャ
ど、どうしたの、ファル!
 いきなりのことにパキャは混乱する。
ファル
ファル
~...........
 ファルに近寄ってみると、ファルは苦しそうに呻いたのが聞こえた。
パキャ
パキャ
と、とりあえず運ばなくちゃ......
 でも、パキャは人を運べるくらい力持ちではないことに気づく。
それでも、ためしに担いでみると......
パキャ
パキャ
う、うわ!軽っ!?
私のほうが身長はるかに低いのに、私とおんなじかそれより軽い気がするっ!
ファル
ファル
~............
パキャ
パキャ
や、やば、とにかくつれていかなくちゃ......。


























パキャは、『秘密基地』に戻って、ファルの部屋のベッドにファルを寝かせた。
キッチンなどいろんなところをまわって、看病できると思ったものを探し、ファルの部屋に戻ってきた。

ファルは、まだ寝ていた。額にてを当ててみる。
パキャ
パキャ
う、うわ!あっつ!
ファル
ファル
............
 その声で(の可能性がある)、ファルは目を覚ました。
パキャ
パキャ
あ、ごめん!大丈夫?
ファル
ファル
......大丈夫...っ
パキャ
パキャ
大丈夫じゃないじゃん!
動こうとしないでっ。
ファル
ファル
............ごめん
パキャ
パキャ
謝る必要ないよ、私がここまで運べるくらい軽かったんだもんっ。
ファル
ファル
............
 パキャはその時、ほんの少し、ファルの唇の端が上がったように感じた。
パキャもそれにつられて、微笑んでみせた。
ファル
ファル
......ちょっと、動きすぎたみたいだ。すぐ大丈夫になるよ。
パキャ
パキャ
............
 たしかに、パキャよりすごい運動神経だった。
でも、パキャは走ったところで体調をくずしたりしない。
不安そうなパキャの顔を、ファルは覗きこみながら、ぼそりと言った。
ファル
ファル
............ありがとう
パキャ
パキャ
..................!
 その時、パキャの脳裏で、『彼』とファルが重なった。
『彼』とファルはそっくりなのだ。
無愛想なところ、自分より走るのが速いところ、体が弱いところ、でも、ほんとは優しいところ......。
そして、『彼』が倒れたときはいつも自分が看病していたことも、思い出した───
ファル
ファル
......どうしたの..?....ッ
パキャ
パキャ
な、なんでもないよっ!
それより、休んで、もういくから!
ファル
ファル
............
パキャ
パキャ
いいからっ!
ファル
ファル
..................分かった
パキャ
パキャ
........無理しないでね!
 パキャはそう言い残すと、ドアを開けて飛び出ていった。
ファルはその背中をじっと見つめていた───


ファルは、パキャと同じ時、同じ事を考えていた。
『彼女』とパキャが重なったのだ。
明るいところ、少々うるさいところ、実はとっても優しいところ......。
自分が倒れたとき、いつも『彼女』が看病してくれたこと────























パキャは、部屋に戻った。
すると、またデビちゃんが唸っていた。
パキャ
パキャ
ど、どうしたの!?
デビちゃん
デビちゃん
~~......
 そして、また『あそこ』へ向かって飛んでいった。
やっぱりパキャは追いかけた。
















パキャ
パキャ
─────!
 ついたそこには、さっきまで部屋にいたはずのファルが、ふらふらしながらたっていた。
デビちゃん
デビちゃん
~~......
ファル
ファル
......また、デビちゃんが唸ってるみたいだね。
パキャ
パキャ
そうなんだけど、部屋にいたのに、何で!?
ファル
ファル
......予感がしたんだ。
 何の、ときく前に、部屋に異変がおこった。
辺りをみまわしてみると、そこには、もう一人、何かがいた─────

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