前の話
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まだ肌寒さが残る4月。
私は結婚する。
隣にいるのは、廉くん。
廉くんと毎年来るお花見は
いつも桜が散りかけている。
そんな季節に私は結婚する。
でも相手は隣にいる廉くんじゃない。
私と廉くんはカップルでもないし
そもそも付き合ってない。
でもお互いに離れられなくなって
依存してしまっている関係。
だけど私ももういい歳だし結婚したい。
それにずっとこんな関係
続ける訳にはいかない。
だから私は廉くんからもそして
自分からも自立するために
結婚することに決めた。
今自分の口から発した言葉に
後悔している自分がいた。
「本当は廉くんと結婚したかったんだよ。」
そんなこと言えるわけない。
結婚なんかできるわけない。
廉くんはまだ20歳になったばかりで
これから期待されてる。
そんな廉くんが私と結婚なんか
考えてるわけがない。
廉くんの口からそんな言葉聞きたくなかった。
そりゃ今の彼氏は世界一優しい
それに絶対私のことを幸せにしてくれる。
確信を持ってる自分がいる。
でもなぜか…
私は廉くんから離れられなかった。
いつものように家まで送ってくれる。
帰っていく廉くんの後ろ姿を見てると
本当に消えてしまいそうで
一生会えなくなっちゃいそうで
胸が痛くなった。
〜撮影現場〜
タッタッタッタッタッタ
〜あなた家〜
母「あんた明日の準備できてんのー?」
「しっかりしいやもう!結婚すんねんから!」
好きだよと〜伝えればいいのに🎶
「どこ行くんねー!」
ガチャ
急に廉くんに抱きしめられた。
廉くんの声は震えていた。
いつもの別れ際と変わらない言葉で
廉くんは去っていった。
暗い夜空の下で
ひらひらと桜が散っていった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!