第72話

守るのも業務の一つ
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2023/09/09 07:54
鳳条
鳳条
じゃ、明日は8時に迎え来るね?
平野紫耀
平野紫耀
…ちゃんとあなたさんが迎え来てくれるの?
鳳条
鳳条
...うん、ちゃんと私が迎えに行くよ
平野紫耀
平野紫耀
ホントに…?
鳳条
鳳条
もおー、疑り深いなあ。ホントに私が迎えに行くって



~あなたside~


眉を顰めた疑わしそうな目を向けてくる紫耀くん
「さっき私はずっと紫耀くんのマネージャーでいるって約束したでしょ?」と言葉を付け加えれば幾らか安堵した表情に変えてくれた

ま、疑わしそうに見られても仕方の無いことだけど
明日の朝、ちゃんと迎えに行くのはホントだが、この先も紫耀くんのマネージャーでいるって言うのは嘘だから


……針千本、用意しとかないとダメだよ紫耀くん



鳳条
鳳条
さて、そろそろ帰ろうかな
平野紫耀
平野紫耀
送ってやるよ
鳳条
鳳条
車だからいいよ、大丈夫
平野紫耀
平野紫耀
んじゃ俺が運転してやる
鳳条
鳳条
そのあとどうすんの?紫耀くん帰るの大変じゃん
平野紫耀
平野紫耀
そんなんタクシー拾えばいいだけの話だろ


私を見る紫耀くんの目はまるで、まだ一緒に居たい。と訴えてるようで…

でももう必要以上には一緒に居られない
紫耀くんへの想いは捨てる覚悟をしたのだから


鳳条
鳳条
…もう夜も遅いんだし、紫耀くんはちゃんとお家にいなさい
平野紫耀
平野紫耀
だったら尚更...こんな時間に女性一人とか危ねえだろ
鳳条
鳳条
紫耀くん?今自分の置かれてる状況分かってる?
平野紫耀
平野紫耀
なんだよ、俺の置かれてる状況って


いつの間にか私たちの関係の話になってしまったから紫耀くんの頭ん中から抜けてしまってるのだろう
私が紫耀くん家に来た本来の目的はレイナちゃんとの熱愛報道の真実を知るためだ

記者の人たちも今回の件について躍起になってるに違いない
そんな状況下で紫耀くんを野放しにするのはヤツらに餌を与えるのと同じことだ

逆に危ないのは紫耀くんの方だよ


鳳条
鳳条
今は記者の人に張られてる可能性が高いから無闇に出歩いたらダメだよ
平野紫耀
平野紫耀
ぁ、そうだった。でも何聞かれても俺とレイナちゃんの間には何もねえって否定すればいいじゃん
鳳条
鳳条
否定し続けてもあの人たちはどうせ諦めない。しつこく付きまとって来るってのを想定して今は必要以上外に出ないで大人しくしとくのが一番の策だよ
平野紫耀
平野紫耀
だったらあなたさんは?俺のマネージャーって知られてんだからあなたさんにも何かしらの危害が……
鳳条
鳳条
私は大丈夫。もし記者と遭遇しても無言を貫くから。まあ、遭遇しないように躱す策とか練るけどね


タレントの安全を守るのもマネージャーの仕事
まあ、私が紫耀くんの安全を守るのもあと僅かな時間しか無いけど、ね

鳳条
鳳条
って事で、紫耀くんは私の心配なんかしなくて良いから

そう告げると私はソファから腰を上げこの場からお暇するために玄関へと向かう
その間、紫耀くんは何も言葉を発することなくただ黙って私の後ろを着いて来る




靴を履き終えたところで紫耀くんの方に目を向けたが、顔が下に向けられており表情が分からない

鳳条
鳳条
じゃまた明日ね。お邪魔しました


取り敢えずそれだけ告げ玄関の戸を開けたところで漸く紫耀くんは私の方に顔を向け口を開いた




平野紫耀
平野紫耀
俺はやっぱり...あなたさんが一番大切だから...俺っ、あなたさんを失うとか...ホント無理だからな、?


この子はなんでこんな狡いんだろう
このタイミングで...そんな悲しそうに...
でも目の奥はとても愛おしいものを見るように...




それでも私は何も答えられない
その代わりにただ一言、おやすみ。と短く告げれば気持ちを断ち切るように外に出て戸を閉めた
そして車に乗り込むや否や堰き止めてた涙が溢れ出す
それが止まるまでハンドルに頭を預けてたのと同タイミングで、紫耀くんも私が去って行った玄関の扉を見つめながら泣いていたなんて勿論知る由も無かった











平野紫耀
平野紫耀
...どんだけ邪魔すれば気が済むんだよ...告白の神様のヤツは...

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