~あなたside~
眉を顰めた疑わしそうな目を向けてくる紫耀くん
「さっき私はずっと紫耀くんのマネージャーでいるって約束したでしょ?」と言葉を付け加えれば幾らか安堵した表情に変えてくれた
ま、疑わしそうに見られても仕方の無いことだけど
明日の朝、ちゃんと迎えに行くのはホントだが、この先も紫耀くんのマネージャーでいるって言うのは嘘だから
……針千本、用意しとかないとダメだよ紫耀くん
私を見る紫耀くんの目はまるで、まだ一緒に居たい。と訴えてるようで…
でももう必要以上には一緒に居られない
紫耀くんへの想いは捨てる覚悟をしたのだから
いつの間にか私たちの関係の話になってしまったから紫耀くんの頭ん中から抜けてしまってるのだろう
私が紫耀くん家に来た本来の目的はレイナちゃんとの熱愛報道の真実を知るためだ
記者の人たちも今回の件について躍起になってるに違いない
そんな状況下で紫耀くんを野放しにするのはヤツらに餌を与えるのと同じことだ
逆に危ないのは紫耀くんの方だよ
タレントの安全を守るのもマネージャーの仕事
まあ、私が紫耀くんの安全を守るのもあと僅かな時間しか無いけど、ね
そう告げると私はソファから腰を上げこの場からお暇するために玄関へと向かう
その間、紫耀くんは何も言葉を発することなくただ黙って私の後ろを着いて来る
靴を履き終えたところで紫耀くんの方に目を向けたが、顔が下に向けられており表情が分からない
取り敢えずそれだけ告げ玄関の戸を開けたところで漸く紫耀くんは私の方に顔を向け口を開いた
この子はなんでこんな狡いんだろう
このタイミングで...そんな悲しそうに...
でも目の奥はとても愛おしいものを見るように...
それでも私は何も答えられない
その代わりにただ一言、おやすみ。と短く告げれば気持ちを断ち切るように外に出て戸を閉めた
そして車に乗り込むや否や堰き止めてた涙が溢れ出す
それが止まるまでハンドルに頭を預けてたのと同タイミングで、紫耀くんも私が去って行った玄関の扉を見つめながら泣いていたなんて勿論知る由も無かった