第68話

貴女が近くにいる安心感
931
2023/08/07 10:16
~紫耀side~


厄介なことになった

いきなり事務所に呼ばれて行ってみると、バンッ!という効果音付きで目の前に突き付けられたのは一枚の記事

どうやらすでにネットニュースになって世に出回ってるらしいその記事には俺とレイナちゃんが写ってる

それを見たと同時に当時の出来事が一瞬で蘇った
レイナちゃんが勝手に俺のマンションに来た時のやつだ…




平野紫耀
平野紫耀
その子と付き合ってるという事実はありません


俺はもちろん否定した
まあレイナちゃん側も否定してくれてると思いきや、黙秘を貫いてるらしい

いやいや、意味わかんねえから
黙秘ってなんだよ
付き合ってるってホラ吹かれた訳では無いけど、ハッキリ否定をしてる訳でもない

マジで意味わかんねえ

しかも社長は怒りの矛先をあなたさんにも向けてるし
自分のタレントの管理もちゃんと出来てないとか云々…

いやいや、あなたさんは悪くねえだろ!
そもそも俺とレイナちゃんの間には何もねえから!!


もう一度言わせてもらおう
マジで意味わかんねえし、マジで厄介だ



____



今回の件に関して特に処分とかは無かったけど、社長は納得してないようだった
写真を撮られてしまった以上、この熱愛報道は信憑性が高いと思ってしまってるっぽい

でも俺はひたすら否定するだけだ
だってホントに俺はレイナちゃんと付き合ってないし、何よりも俺はあなたさんことが大好きだ
あなたさんのことしか考えられない

……あなたさんとの熱愛報道なら良かったのに


さて、今から俺はまた否定をしまくる
次はあなたさんを相手に…



鳳条
鳳条
いきなり過ぎて…正直私もまだ処理が追い付いてないってゆーか…


あなたさんが言葉を発するのをじっと待っていると、困ったような顔をしながらようやく口を開いてくれた


平野紫耀
平野紫耀
俺もまさか今日あなたさんと会えるなんて思ってなかったからビックリしてる
鳳条
鳳条
っ、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?
平野紫耀
平野紫耀
そうだけどさ…

ホントなら明日帰って来る予定だったのに車を飛ばして来てくれたのだろう

事情が事情だし、こんなこと思うのは不謹慎なのは重々承知だけど嬉しい

だってずっと会いたくて堪らなかったから…


平野紫耀
平野紫耀
あなたさん
鳳条
鳳条
……なに?
平野紫耀
平野紫耀
おかえり
鳳条
鳳条
うん、ただいま
平野紫耀
平野紫耀
やっぱあなたさん帰って来てくれると安心感が違うわ
鳳条
鳳条
…あんな記事が出回って…不安だったの?
平野紫耀
平野紫耀
うーん、違うかな
鳳条
鳳条
違うって…普通不安なんじゃないの?
平野紫耀
平野紫耀
あなたさんは俺の近くにいてくれるのが一番いい
鳳条
鳳条
なによ、それ
平野紫耀
平野紫耀
マジで会いたかった…

そう言いながら俺はあなたさんの隣に移動すると、肩をピッタリと寄せ合うように腰を下ろした
でもすぐにあなたさんはそれを避けるかのように、俺との間を少し開けて座り直してしまった
そして顔を伏せながらポツリと言葉を零し始めた


平野紫耀
平野紫耀
ぇ、あなた…さん、?
鳳条
鳳条
……うして、
平野紫耀
平野紫耀
なに…?
鳳条
鳳条
そんなこと言うならどうして…あんなの撮られちゃったの…?
平野紫耀
平野紫耀
それは…
鳳条
鳳条
どうしてレイナちゃんは紫耀くんのマンションに来たの…?
平野紫耀
平野紫耀
それには理由があって…
鳳条
鳳条
どうしてレイナちゃんとの熱愛報道が出たのよ!!
パッと伏せてた顔を上げたあなたさんと視線が重なり合う
しかし俺はあなたさんの表情を見た瞬間、胸が締め付けられて苦しくなった



だってあなたさんの目には涙がいっぱい浮かんでたから…

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