~あなたside~
さて、マネージャー業務はどうにかなることになったけど…
急遽今から実家へ帰らないといけなくなったことを紫耀くんに伝えなくてはいけない
どうやって伝えようかな…と思考を巡らせながら紫耀くんが居るであろう待機室の中に入ろうとした時、とある光景を目にしてしまい胸がギュッと締め付けられた
紫耀くんとレイナちゃんが親しそうに喋ってる
会話までは聞こえないけど、紫耀くんの顔…とても優しそうっていうか、穏やかっていうか…
そんな顔…私以外の人に見せないで…
なんて思ってしまってる私はもう、すっかり紫耀くんのことが好……
部屋の中に入るタイミングを伺ってると、紫耀くんの方から気付いてくれた
でも見ちゃったんだよね、一瞬顔を歪ませたレイナちゃんの顔を…
今は私に向けてにっこり笑ってくれてるけど…さっきの顔は一体なんだったんだろう
私が実家に帰ると言った途端、急に立ち上がった紫耀くん
しかも何か慌てた感じで…
紫耀くんの言葉と被せるようにレイナちゃんが口を開いた
レイナちゃんの言葉は本来私が言わなくちゃいけない言葉だけど...
「未来の」
気になるワードを残したまま、紫耀くんはレイナちゃんの問いに答えてしまった
しゅん、と肩を落としてる紫耀くん
私だってなるべく早く帰って来れたらいいなって思ってる
それなのに、レイナちゃんは私が思ってることと真逆のことを言ってきた
何故か急にパァ、と表情が明るくなったレイナちゃん
……なんでレイナちゃんがそんな嬉しそうにするの?
紫耀くんの表情はレイナちゃんと逆で暗い
もうそろそろ行かなきゃいけないのに...そんな表情されてたら行きにくいよ...
チラッと私に視線を向ける紫耀くん
そうだったね
私が言う「頑張れ」は紫耀くんにとって魔法の言葉ってこの前言ってたもんね
そしたら今日は特別に...飛びっきり心を込めてその言葉を送ってあげよう
ゆっくり紫耀くんに近付くと両方の手を取りギュッと握る
そして...
満面の笑みを浮かべてそう告げると、紫耀くんの顔は、ふにゃっと垂れた
よし、これで心置き無く実家へと帰れる
って思ったけど、私と紫耀くんのやり取りを見ながらレイナちゃんの顔が恨めしそうに歪んでたことに気付きもしなかった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。