ぼーっ、と見とれていると、狐火が顔の周りをぐるぐると回る。
するとまたどこかへ飛んでいく狐火。
私はそれを追いかけた。
狐火達が飛んでいくのは、石畳の上。
メインストリートのようにも思える道を、堂々と通っている。
それについて行くように走ると、段々とオレンジ色の光は無くなっていき、遂にはぽつん…と一つだけになった。
目の前に見えるのはその光だけ。
急いでポケットから携帯電話を取り出し、ライトをつける。
目を凝らすと、そこには神社のような建物があった。
狐火はその中へと障子をすり抜けて入っていく。
(行っちゃう…!)
私は足を踏み出し、社の前へと来る。
…が、誰の所有物か分からないところに無断で入るのはどうなのか、と躊躇してしまう。
引き返そうか、とも考えたけれど、ここまで来たのなら最後まで見ていきたい。
(よし。)
私は目の前の障子に手をかけ、右へゆっくりと引いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!