ご飯も食べ、お風呂も済ませた私は、祖父母が用意してくれていた部屋へと来ていた。
近くに畳まれてあった布団を敷き、中に入るも、目はカッと開いたまま。
慣れない場所だからか、久しぶりの宿泊だからか、それは定かではない。
(そういえば…。)
全く眠くない頭を回転させ、数時間前のことを思い出す。
そう、夜ご飯を食べているとき。
__
天ぷらといなり寿司を頬張っていた私に、おじいちゃんが突然そう話し出した。
(狐火って、あれだよね。
鬼火…みたいな。
何も無いところに突然火の玉が現れたりするやつ。
それがどうしたんだろう。)
な、なんだろう…話の筋が掴めない。
_
とか、話してた。
確かこの町の伝説で、狐火を見た人は幸福が訪れる…とか。
狐火って、怖いものだと思ってた。
怪火?とか言われてるみたいだし。
携帯電話で狐火、と打ち調べると色々と出てくる。
(なんだか気になってきちゃった…。)
私は良くも悪くも、好奇心というものが旺盛すぎる。
こうとなれば…!
寝間着として着ていた黒いTシャツの上にカーディガンを羽織り、そーっと部屋を出る。
片手には携帯電話を握りしめて。
玄関まで行くには祖父母の居る部屋の横を通り過ぎなければならない。
(一か八か…!)
忍び足で襖の前を通り過ぎる。
じっと様子を伺ってみるも、中から人が出てくる様子はない。
よしっ、バレなかった!
私はそのまま玄関へと向かい、サンダルを履く。
ガラガラと鳴らないようにドアをゆっくりと開けて、外へ飛び出した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!