第5話

__
133
2020/08/18 16:18
ざっ、ざっ、ざっ
と私が歩く度にそんな音が鳴る。
目の前は真っ暗で、携帯電話からの光でかろうじて見えるくらい。
山へと入ってきたけれど、狐火らしきものは見当たらない。

(やっぱり伝説は伝説なのかな…。)

ため息がこぼれる。
祖父のあの言葉は嘘、か。
まぁユーモアがあって良かったけど。
雪乃
雪乃
もう帰ろ。
ぽつり、とそう呟き、きびすを返す。
残念だけど、この冒険?は楽しかったから良いかも。

(さすがにそろそろ眠くなってきたな…。)

欠伸をすると、うっすらと開けた目の端に、淡い赤色が映る。
雪乃
雪乃
…!?
それ はふよふよと浮いており、蛍でもないようだった。
そもそも赤い蛍なんて聞いたことがないし、見たこともない。

(も、もしかして…。)

その光は、現れては消え、現れては消え。
次第に2個、3個、と増えていく。
携帯の光を消しても周りが見えるくらい明るく、まるで案内をされているよう。
1列になった光…否、狐火は山の奥へと進んでいく。

(見失わないようにしないと…!)

私が調べた限り、狐火は追いかけているうちに消えるらしいから…。
目を開き、出来るだけ瞬きをしないよう注意しながら山道を進む。
だけど狐火が消える様子はない。
本当に、案内されてる?
ここまで来たのなら、もうどこまででも着いてってやろう。
朝になる前に帰れば良いのだ。
雪乃
雪乃
…って、狐火さん待って…!
考え込んでいると、危うく見失うところだった。
危ない危ない。
私はぬかるんだ地面を蹴り、駆け出した。

プリ小説オーディオドラマ