第3話
彼女(仮)宣言
司書さんがため息をついたのが見えた。
こちらにやってくる。
きっと注意されるんだろうな。
なんて、のんきに考えていた時。
──彼と、目が合った。
明らかにこちらに向けられた言葉に、戸惑う。
確かに、毎日彼のことを待っていたことは、否定できないけれど。
私がありえないことを考えている間に、彼は近くにやってきて、後ろに回り込んだ。
肩に手を置かれて、その熱さにビクッと体が強ばった。
そして、
耳のすぐそばで発せられた言葉が理解できなくて、ひとまずまばたきを2回。
ひとつずつ反芻して、後ろを振り向く。
反応が遅すぎる私に、彼が苦笑いをする。
小声で伝えられた先を見てみると、先ほどからずっと騒がしいふたり組の姿。
もう一度振り返って彼を見ると、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
逆光で透けた茶色い髪の毛が、綺麗。
正面を向けば、私を睨みつける女の子。
肩が熱い。
そばにいる。
触れている。
ギュッと目を閉じて、唇を噛み締める。
ずっと、斜め前にいる顔しか知らなかった。
だからきっと、何かを変えてみたかったのかもしれない。
自分が、こんなことを言うなんて。
肩に置かれた手のひらが、ピクっと反応したのを感じた。
彼ばかりか、私まで肯定したのが効いたのか、目の前の女子は捨て台詞のようなものを吐いて、去っていった。
ツンツン頭の男子も、それに続いて出ていく。
はぁー、と、大きく息を吐く。
今でも信じられない。
知らない人の彼女だなんて、自ら嘘をついて……。
心臓がバクバクと騒いでうるさい。
彼が周りを気にして、私の腕をつかんだ。