どうして、こうなったんだろう。
日誌を担任の先生に提出して、日直の仕事も終わったのに、石山くんはずっと私の後ろをついてくる。
まだ歩いて5分ほどしか経っていない。
だけど、すでに心が折れそう。
これは一体、何の時間なんだろう。
*
永遠のような10分間だった。
無事に図書館に着いて、深く息をつく。
図書館に入ってすぐのコインロッカーで別れようと思ったら、不満げな声で呼び止められた。
頭を下げて、ひとりで図書館の中へ。
昨日の学習スペースではなく、まずはいつもの席を探すと、福原くんはすでに座っていた。
本は何も持っていない。
声をかけると、頭を上げた福原くんは、一瞬眉を寄せた。
後ろを指さされ、振り向くと、石山くんがぴったりと背後についていた。
全然気づかなかった。
初めて喋ったのに、なぜか今日はよく絡んでくる。
意味が分からなくて、対応に困ってしまう。
若干乱暴に立ち上がった福原くんは、すぐに私の手を取って、昨日と同じ学習スペースへと向かっていった。
福原くんは最後に石山くんを睨んだようだったけれど、手を繋いでいることにいっぱいいっぱいだった私に、気にできる余裕はなかった。
*
席に着いて、昨日と同じく、その距離感にドキドキした。
だけど、福原くんはそれどころではない様子。
ムッと唇を結んで、考えごとをしているように見える。
名前を呼んだら、福原くんの寄った眉がピクッと動いた。
福原くんは、心なしか安堵の表情を見せた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!