第21話
さよなら。
何かを言うために口を開いたらしい福原くんは、要件に入る前に言葉を止めて、笑う。
*
ふたりで、近くのショッピングモールにやってきた。
真っ先に本屋さんへ向かったら、「茉莉花らしい」と笑われたり、
買いもしないのに、服をただ見るのにも付き合ってくれたり、
福原くんはバイクと釣りが好きらしく、私ひとりなら絶対に立ち入らない専門店に初めて入ったり、
本当に楽しかった。
*
外に出る頃には、空は薄暗くなっていた。
空を見上げて呟く福原くんは、苦笑いを浮かべている。
言葉を遮って、女の子の声が乱入する。
振り向くと、理央さんがいた。
他にも、一緒に女の子が三人いる。
福原くんから視線を外し、理央さんは私を見るなりギロッと鋭い眼差しを向けた。
私を隠すように、福原くんが間に入る。
福原くんが喋るたびに不機嫌顔を濃くしていく理央さんとは反対に、私の顔は赤くなっていく。
理央さんは、最後に私に一睨みをするのを忘れず、早歩きで去っていった。
その後ろを、友達が追いかける。
心底安心しきっているような笑顔に、見えない刃が刺さったみたいに、胸がズキンと痛む。
早口で、自分の言いたいことだけをまくし立てて、福原くんの顔を見ないように背中を向ける。
彼が引き止めようとしてくれたのは分かっていたけれど、振り向かなかった。
これ以上、好きにならないために。