第15話
「もう少し一緒にいたい」
手を前で揃えて、頭を下げて礼をする。
立ち去ろうとしたら、呼び止められた。
空を見上げる。
昼間ほどの照りはないけれど、それでも充分に明るい。
と、福原くんは頭の後ろを掻く。
*
会話に集中できない。
さっきの言葉が、気になって。
帰り道、隣で福原くんが話しかけてくれているのに、内容があまり頭に入ってこない。
頬に手を当てる。
チラッと顔を見上げると、優しい微笑みが返ってきた。
*
翌日になって、学校に行くと、教室のドアの前で石山くんが立ち塞がっていた。
確かに、私が福原くんの本当の彼女じゃないことは、当たっている。
いつかは終わる関係。
クラスメイトに呼ばれた石山くんは、ダルそうに返事をした。
石山くんはフンと鼻を鳴らして笑い、この場を後にした。
*
それから一週間が経っても、私の図書館通いは続いていた。
放課後、福原くんに会いに行く。
それは、すっかり日課で、当たり前になっていた。
今日は、金曜日。
あの日から、福原くんは毎日家まで送ってくれるようになった。
外が明るくても、暗くても、どっちでも。
福原くんの家がどこなのかは聞いたことがないけれど、遠回りになっていることだけは確か。
福原くんが図書館にやってきて、またいつもの時間が始まる。
理央さんも、図書館に現れることはなくなっていた。