デートから、一週間が経った。
私はあれ以来、放課後の図書館通いをパッタリとやめた。
無意識に彼のことを考えている自分に気づいて、慌てて首を振る。
本当は、分かっていた。
忘れることなんて、できない。
委員会の仕事のために、別教室へ移動したはつみちゃんを見送って、自分の席でため息をひとつ。
うつむいていたから、人が近づいていたことに気づかなかった。
座っている私を見下ろす顔には影が出来ていて、いつもより二割増しで怖い。
私なりに勇気を振り絞って、抵抗の意志を示したものの、
無言の圧力を感じて、さらに怖い。
腕をつかまれ、問答無用で強引に連れ出される。
*
石山くんに引っ張られ、現在地、ファーストフード店。
「座ってろ」と言われ、四人がけの席で待っていると、目の前にドンとトレーが置かれた。
それぞれ種類が違うハンバーガー四個、Lサイズのポテトが二個、バニラシェイク三個、アップルパイ五個。
威圧感に負けて、アップルパイに手を伸ばす。
ここに連れてきた目的は何なんだろう。
石山くんも、テーブルを挟んで向かい側に座る。
サクサクのパイ生地の中から、熱くて甘いりんごが口いっぱいに広がった。
ここ一週間、ほとんど食べられず、味もあまり感じることが出来なかったのに。
石山くんもハンバーガーを手に取り、包まれている紙を剥がした。
ストレートな物言いが、グサッと刺さる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。