はつみちゃんたちと雑談をして、たまに遊びに出かけて、
あとは、大好きな本さえ読めればそれでいい。
自分から話しかけることも苦手だし、怖い。
その、数少ない“ほとんど”が福原くんだったのだけど、それは恥ずかしくて言えない。
じーっと凝視をして、私の次の言葉を待つ福原くんに、なんて返したらいいのか迷ってしまう。
机の下に手を隠して、ぎゅっとこぶしを作る。
福原くんの表情を見るのが怖くて、目を閉じて想いを吐露する。
恐る恐るゆっくりと片目ずつ開くと、
大きな手のひらが顔を覆って、視界は再び真っ暗に。
ズレた手のひらの、指の隙間から見えた顔は、赤くなっていた。
つられて私も赤くなるけど、すぐに自分に否定をする。
福原くんしか見ていなかったから、人が近づいていることに気が付かなかった。
理央さんたちが、仁王立ちでそこにいた。
グサッと刺さることを言ってくださる。
鋭い物言いに、理央さんは言葉に詰まって、怯むように後ずさりをした。
ハルさんと呼ばれた男子は、理央さんの首根っこをつかんで、強引に引っ張っていった。
私にはやわらかい物腰で接してくれるから忘れかけていたけど、
福原くんは見た目がちょっと怖そうで、私が最も苦手とするタイプの人なんだったっけ……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。