第13話
「可愛い」
理央さんたちがいなくなって、帰るまでの間、私たちは本を読んで過ごすことにした。
福原くんは、同じ本をふたりで読もうとしたのだけど、
あの接近は心臓に悪すぎるから、断った。
少しガッカリしているようにも見えたけど……。
その代わり、オススメを教えて欲しいという彼に、昨日の本と同じ作者さんの本を薦めた。
隣の席で、真剣な表情でページをめくる姿に目をやる。
少し前なら、考えられなかった。
こんなふうに知り合って、隣同士に座って、話ができるなんて。
あの日、たまたま私が図書館にいて、困っていた福原くんがたまたま私と目が合っただけ。
横顔を見る。
横顔が、気まずそうな正面顔に変わる。
えへへと照れ隠しで笑って、私も本に目を落とす。
暗くなると福原くんに送っていってもらうという迷惑をかけてしまうから、読めるところまで急ごう。
なんて考えている最中、どうにも落ち着かないのは、今度は福原くんが私の横顔をじっと見ているから。
ニコニコとそんなふうに言われても、気にしないなんて無理。
即仕返しをしたくなるほどに。
密かにショックを受けていると、フッと吹き出す声が聞こえた。
眉間にシワを寄せて考え込んで、絶対にブスだった。
すぐに手で額を隠す。
案の定笑われて、自分の行動が遅すぎたことを知る。
言い聞かせても、ドキドキしすぎて止まらない。