第10話
日直の日に
翌日。
一日の授業も終わり、放課後になったけれど、まだ帰れそうにない。
日直の当番が回ってきた際に書かなければいけない日誌を前に、私は少し困っていた。
じーっと、見られている。
もうひとりの日直、石山くんに。
私の前の席に後ろ向きに腰かけて、何をするでもなく、ただ見ている。
男子とはそもそも喋ったことのない私が、よりによって石山くんと。
石山くんは、髪の毛を赤っぽいブラウンに染めていて、制服も着崩していて、口調もちょっと乱暴な感じで……。
もちろん、私の苦手なタイプ。
と、思いはするものの、実際に声に出すことなんて出来ない。
教室から続々と生徒たちが帰っていく中、石山くんは私の前からジッと動かない。
日誌に今日の時間割を書き写している間も、石山くんはあくびをしたり、つまらなそうにその様子を観察しているだけ。
と、もちろん、そんなことも言えるはずはない。
初めて名前を呼ばれた。
驚いて、日誌に向けていた視線を、思わず上げる。
面倒そうに石山くんが話しかけてくる時にも、日誌を書く手は止めない。
あともう少し。