翌日。
一日の授業も終わり、放課後になったけれど、まだ帰れそうにない。
(日直だと、これ書かなきゃいけないんだっけ)
日直の当番が回ってきた際に書かなければいけない日誌を前に、私は少し困っていた。
じーっと、見られている。
もうひとりの日直、石山くんに。
私の前の席に後ろ向きに腰かけて、何をするでもなく、ただ見ている。
(き、気まずい……)
男子とはそもそも喋ったことのない私が、よりによって石山くんと。
石山くんは、髪の毛を赤っぽいブラウンに染めていて、制服も着崩していて、口調もちょっと乱暴な感じで……。
もちろん、私の苦手なタイプ。
石山、お前帰んねーの?
俺、日直らしくて
らしくて、ってなんだよ
黒板に名前があんの見て、気づいた
バカじゃねーの。最後まで忘れときゃよかったのに
(黒板を消すのも、授業前の号令も、全部私がやりましたもんね……)
と、思いはするものの、実際に声に出すことなんて出来ない。
(どうせなら、本当に最後まで忘れてくれていればよかったのに)
教室から続々と生徒たちが帰っていく中、石山くんは私の前からジッと動かない。
(一時間目は、世界史)
……
(二時間目は、現国)
……ふああ
!
(き、気になる……!)
日誌に今日の時間割を書き写している間も、石山くんはあくびをしたり、つまらなそうにその様子を観察しているだけ。
(居るだけなら、帰ってもらった方が助かるなぁ……)
と、もちろん、そんなことも言えるはずはない。
(せめて、出来るだけ早く終わらせよう)
(福原くんのことも、待たせちゃってるかもしれないし)
吉岡ってさあ
え……、えっ?
初めて名前を呼ばれた。
驚いて、日誌に向けていた視線を、思わず上げる。
放課後になると、いつも急いで教室出るよな。バイトでもしてんの?
えっ……と、バイトじゃなくて、図書館に行っているだけで……
(いつもって言った? いつも見られてたってこと?)
(そんなに目立っていたかな。コソコソしてたつもりだったのに、恥ずかしい)
図書館? 行って何すんの
図書館なので、本を読みます……
(なに? これ、何の時間?)
これ書き終わったら、今日も図書館?
一応、そのつもりで……
(気をつかわれているとかなのかな。一緒に日直になったからって、場を持たせるために?)
図書館なんか毎日通って楽しいか?
(ううん、悪口かな……)
(図書館“なんか”って言い方、好きじゃない……)
うん、私は楽しい……けど
へー
面倒そうに石山くんが話しかけてくる時にも、日誌を書く手は止めない。
あともう少し。
(よし、これで終わり)
俺も行こっかな
え
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!