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第1話

まだ、見られたくない
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2020/12/12 01:28







若干R15、BL無理な方はバック。




















「泉……ちゃん」
「あーもうしゃべんなくていいから」
「こんなことしてごめん」

汗をかいてしまったカラダをその場しのぎでタオルで拭ってシャツを羽織って放課後の練習のためにセットを用意した。色々片付けてたし、隅っこで泉ちゃんといたから大丈夫だとはおもうけどまだ彼を見ても動悸治まらない。そのままぼーっと見てしまったようで「ナルくん」と頬を軽く触れられてはっと気づく。空気を換気して、スポーツドリンクを貰って飲んでちょっとしたとこで練習室のトビラから様子を伺うようにひょこっと来たのは

「やーほー、2人は元気だねぇ」
「くまくんなら聞いてたとかどうでもいいんだけど、俺としては見られたかったなぁ」
「ちょ、泉ちゃん!凛月ちゃん!何言ってるの? アタシは嫌よそんな誰かに……見せるなんて」
「そういう俺には見せてるナルくんもいいけどねぇ」
「ナッちゃんは表情豊かだからねぇ、セッちゃんのあまり見ない照れというか「くまくんだまってて!」

ぎゅむって口を押さえ込んだ凛月ちゃんはニヤけてた。なんだかついさっきあったコトを思い出してしまって恥ずかしさを隠すようにアタシは急いで部屋から出てしまった。閉めた部屋の奥からはアタシを呼ぶ泉ちゃんの声が聞こえるけど、やっぱり耐えられないんだわ……。いつものガーデンテラスでお茶でもと思ったけども、この顔誰かに見られてもいいことなんてないし帰るべきかしらと悩みながら行き着いたのは屋上。夕方に近づいてるせいか少し暗いくらいがアタシの顔少しでも陰ってくれるの。

「まだまだ未熟ね」

ベンチに座って、少しずつ呼吸を慣らして深呼吸繰り返す。少しでもさっきの空気が消えるように、消えちゃいけないけど恥ずかしいから。練習室で泉ちゃんとなにしてたかなんて言えないけど、とても好きの気持ちを吐き出せるし泉ちゃんの顔が見れて幸せなの。でもまだ凛月ちゃんに見られて恥ずかしくなって逃げるのは慣れてないかしら? もう何回も繰り返してるのに、次王さまや司ちゃんが来たら

「居場所なくなっちゃうじゃない」
「バカ、探すのは簡単だけどさそうやってすぐ体育座りして女の子みたい」
「そういうアタシを受け入れてくれるのは泉ちゃんじゃないの」
「騎士同士で個人同士でちゃんと話せるユニットなんてめったにないんだからさ、Knightsに入ったんならお兄ちゃんに甘えていいんだよ。それにナルくんからでしょ、俺にキスさせて欲しいって言ったの。ただの傷の舐め合いかもしれないけどさ、それでナルくんが楽になれば俺はそれでいいし」
「すぐ泣かせようとしてくるのがお兄ちゃんなのかしら、もうっ」

「バーカ」と言われながらアタシの少し涙ぐんだ瞳を指で拭って、唇に指が触れて離れて再度触れて視界が片手で遮られたと思ったら泉ちゃんの唇感じたの、濡れるような息遣い、側にいる音がとくんとくんて聞こえてくるように。視界が開けて照れた顔があって帰るよって帰るのはただのレッスン室かもしれない、どこに連れてかれるのかしらとふと思ったけどそう言えばスマホ以外置いてきたのを思い出してしまってまたあのレッスン室かと思ったら顔が紅くなる。

「レッスン室行くの嫌そうだから荷物はナルくんの教室でもいいかなと思ったけど保健室にしといたから、今日は帰りなよ。どうせ王さま今日来ないってくまくん言ってたし、かさくんに見られてもみっともないとか言われるの嫌だろうし」
「ありがと、泉ちゃんの言う通りにするわ」
「でも、ああいうのするのは次は俺の家おいで、そしたら何にも恥ずかしいことないし、練習も出来るんだしさ。俺にとってはナルくんと良きモデルのお仕事でコンビになるといい感じに撮ってもらえるの好きだからさ、だからあれごときでもう逃げないでよねー」

立ち上がらさせてもらって、保健室の前まではついてきてもらった少しだけ指絡めて。そこは誰もいない放課後の道だったから。まだまだこれはただの序章にすぎない、アタシが憧れが無駄にならないように、今のユニットでお兄ちゃんと呼べる人がいるのが卒業してしまう前に何が出来るかしら。

「泉ちゃんが好き、もっとドキドキしたいの」

end

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