私は帰り道に珠と色んな事を話しながら家に着いた。
しまった。すっかり忘れてしまっていた。
珠は私の手を掴んだ。
突然の事でビックリするしか無かった。
私はしぶしぶ自分の部屋へ行き、まだ封を開けていない手紙を持って珠のもとに戻った。
珠は逃げるように隣にある家に戻った。
珠が帰る時に見えた横顔は少し赤く火照っていた気がした。
★★★★
珠side
★★★★
俺は彩と別れた後、家に入って、母さんと弟が何か言っている気がしたけど今は聞いてる暇なんか無かった。
まさか読んでなかったなんてな。それだから全然気まずく無かったのか。
………………まあ、それでも良かったのかな………………
俺はふと、自分が何日もかけて書いた手紙を読んでみたくなった。
自分がどんな事を彩に伝えようとしたのかが気になったから。
はぁ〜っ。なんて事書いてんだ。俺は。
女々しいな(笑)自分で書いたくせに。(笑)
「情けないな」
と思いながら手紙を握り締めたまま、
俺は自分のベッドに倒れこんだ。
気持ちを紛らわそうと笑ってみたものの寧ろ悲しくなってしまった。
目を擦ると、なぜか、俺の目から熱いものが溢れてきた。
悔しくて悔しくてしょうがなかった。
自分にはこんなに勇気が無かった事が。
この関係を壊したくないと思ってしまった自分が嫌になって。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!