第5話

不思議
94
2018/06/03 08:49
私は帰り道に珠と色んな事を話しながら家に着いた。
珠
あ、あのさ、……
彩
ん?
珠
あの、手紙っ。…………読んだ?
彩
あ、読んでない……ごめん!
珠
あ、う、うん。
しまった。すっかり忘れてしまっていた。
彩
じゃーね!
珠
ま、まって!
珠は私の手を掴んだ。
突然の事でビックリするしか無かった。
彩
ど、どうしたの?珠?
珠
やっぱ読まないで!
彩
え、え?!なんで?
珠
…………とっ、とにかく!開けないで持ってきて!
彩
わ、わかったよ……
私はしぶしぶ自分の部屋へ行き、まだ封を開けていない手紙を持って珠のもとに戻った。
彩
はい。
珠
あ、ありがとな!じゃ!
彩
あ、
珠は逃げるように隣にある家に戻った。


珠が帰る時に見えた横顔は少し赤く火照っていた気がした。
彩
(まぁ、いっか。)
★★★★
珠side
★★★★
俺は彩と別れた後、家に入って、母さんと弟が何か言っている気がしたけど今は聞いてる暇なんか無かった。
珠
はーーーーーーーーーっ。
何やってんだろ俺。
まさか読んでなかったなんてな。それだから全然気まずく無かったのか。
………………まあ、それでも良かったのかな………………
俺はふと、自分が何日もかけて書いた手紙を読んでみたくなった。

自分がどんな事を彩に伝えようとしたのかが気になったから。
珠
彩へ。

彩へ向けて初めて書いたから

下手くそだし、変な所もあるから気にしないでね(笑)

とりあえず、お互いに中学校に入学おめでとうってとこかな。

まさか同じ中学校だとは思わなかったから嬉しかったな!(笑)

しかも、同じ野球部だなんて!

めっちゃ嬉しかったわ!

彩と幼馴染で本当に良かった。

でも。

俺は幼馴染で終わりたくない。

幼馴染じゃなくて、俺は彩の事を

1人の人間として見てる。

彩、俺は彩が好きだ。

俺、他の奴みたいに頭も良くないし、

特別顔が良いとか身長が高い訳でも無い。

だけど、彩を思う気持ちは誰にも負けない。

もし、こんな俺で良ければ

電話で返事して下さい。

珠。
はぁ〜っ。なんて事書いてんだ。俺は。
女々しいな(笑)自分で書いたくせに。(笑)
珠
ふぅーっ。
「情けないな」
と思いながら手紙を握り締めたまま、
俺は自分のベッドに倒れこんだ。
珠
あはははは……
気持ちを紛らわそうと笑ってみたものの寧ろ悲しくなってしまった。

目を擦ると、なぜか、俺の目から熱いものが溢れてきた。
悔しくて悔しくてしょうがなかった。

自分にはこんなに勇気が無かった事が。

この関係を壊したくないと思ってしまった自分が嫌になって。

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