珠side
彩と急遽、スタメンでバッテリーを組む事になった。正直、不安と心配しかない。でも、彩の方が苦しいはずだ。俺は彩を超えることは出来ない。俺が頑張っているときは彩は人一倍頑張ってて、俺が苦しいときにも人一倍苦しいはずだ。
だから、せめて彩が安心して出来るように俺が彩より頑張らなくちゃいけない。
そして試合が始まった。
後攻スタートだったが、まだ結果は分からない。
俺たちのバッテリーは順調だ。
★★123456789★★
相手015303021 15
自校02241012 12
ラストの回。
今はツーアウト満塁の
大ピンチ&大チャンス。
そしてバッターは俺。
(スリーアウト交代です。)
ファーストには千優、
セカンドには龍樹、
サードには章大がいる。
そして後ろには彩がいる。
彩や松原さん、それに、越後さん、斎藤さん、みんなの期待を背負いながらバッターボックスへ向かった。
相手の選手の顔は混乱していて、凄い顔になっている。これは余裕の無い顔だ。
一球目。
ストライクを取られた。
でもまだ俺は諦めない。
二球目、
これもまたストライクを取られた。
………………次が肝心だ。
三球目。
俺はこれ以上にないぐらいいい位置で思いっきりバットを降った。
打った打球は綺麗な放物線を描きながら飛んで行く。
頼む。入ってくれ!
いくつかの沈黙の中、
「パシッ」
とグローブの音がした。
みんなが音のした方向へ視線を向けた。
彩が叫んだ瞬間、止まっていた時間が動き出した。
ボールは外野手のグローブに当たっただけだった。
俺は全力で走った。
走って、走って、走って走って、
サードを過ぎた。
あとはホームへ走るだけだ。
ホームへ飛び込んだ。
ベースを触ったと同時にグローブが俺の体に触れた。
頼む!
俺は彩を抱きしめた。
彩も俺を抱きしめた。
2人で初めて、バッテリーとして出場した大会は、自校16点、相手校15点で勝利した。
6人で抱き合った。この6人で初めての大会で、初めて勝って、、、逆転勝利で!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。