第4話

『 奪取 』31 〜
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2019/05/21 13:38
『奪取』

☆31☆


望「おっ!下がっとるやん!w」


はっ!//
そんな風に笑って……♡

……や、ダメだって!
こんなの間違ってる!!!

完全に浮気だからッ!!!



〇「あの!//…私の話し聞いてます?急に何なんですか?」
望「ウッサイなぁ…」
〇「っ//…だって この手!繋いだりしたらダメですよ!私は彼女じゃないんですから!」
望「ウッサイ!熱下がったなら行くぞ!」
〇「は?えっ?何を…」
望「ハッキリさせたるから…」


っ!!!


待って…



きっと私……



『NO』を突きつけられるんだ…





ヤバいよ…もう泣きそ……




コレで最後だから?



だから優しくしてくれたの?



手なんか握って…



バカじゃん…




〇「行かなきゃダメですか……?」
望「おん。お前 連れてくって言ってあるから。」


えっ?誰かと会うの??



☆32☆


スマホを見ると、19時を過ぎたところだった。


先輩は、早足でスタスタと前を行く。

後ろから着いて来ている私になんか気にもしてないみたいだ。

このまま、私だけ帰っちゃっても分からないんじゃないかな…


少し前だったら、先輩に連れ出されるなんて、ウキウキで着いて行ったのに…


でも、どうしてだろう?

こんな気持ちでも、引き返す気には なれない。


ハッキリとはしないけど…

先輩のその背中から感じる何かが、
行かなきゃダメな気がして ならなかった。


『NO』を突きつけられると、分かっていても。


だとしたら、ハッキリさせよう!

曖昧にしていた、私がイケなかったんだから。


私の心は、そんな風に、腰を据え始めていた。



望「お前はココに居ろ。」
〇「えっ…」



公園に入ってすぐの場所に、私を置き去りにして、先輩は奥のベンチに向かった。


☆33☆


「あっ♡望くん♡」


明らかに♡が付いていた声で、パッと明るくなった表情をしたのは、


あの日、先輩が抱きしめていた女の人。


その人が、チラッと私を見ると、表情が一変した。



少し離れた ここからでも聞こえる。

さっきの♡が付いてた声とは全く違う、取り乱している女の人の声。


しばらくして「分かった」と言って、何かを納得した様子だったその人が、私に視線を合わせると、そのまま直視して目の前まで来た。


私はまた、少し後ずさりをしていた。

だって、その目ヂカラと言ったら、怖いとしか言い表せないくらいだったから。


女「望くんに何をしたの?」
〇「え…」
女「どうやって、そそのかしたの?」
〇「っ!あの!チョット待ってください…」
女「望くんはね?私の事をずっと好きだって言ってくれてたの。だから私、望くんにしようと思って…」


やっぱり…


☆34☆

その人は、その後も話し続けた。

先輩に、どれ程 告られたのかを。

その時間が永遠に感じ、気が遠くなりそう…



だから私…



〇「すみませんでした。先輩にはもう、迷惑 掛けませんから…」



手を引く決心をした。




離れたベンチの前から、心配そうに こっちを見ている先輩。




てかさ、、、

私、先輩の事、会被ってたんだ。

こんな男らしくないとは、思わなかった!

自分から、付き合ってるって言わないで、彼女に言わせるなんて!

だったらローファー持って来ないでよ!
熱なんかで心配しないでよ!
手なんか握らないでよ!




抱きしめたり…しないでよ…




嫌い…






そんな先輩…









大っ嫌いッ!!!







後ずさりをしながら、先輩を視界に納めると「さようなら…」と呟きにもならない別れをした。


☆35☆


ッ!!!ガシッ!!!


望「なに勝手に帰ろうとしてんだよ?」


先輩は見たこともない速さで、帰ろうとした私の腕を、また掴んだ。


女「望くん!」
望「うっせーなぁっ!コイツに何言うたッ!」
女「本当の事だよ?どうして?望くん私が好きなんだよね?だから、抱きしめてくれたんでしょ?」
望「はぁ?ちゃうやろっ!」


強い口調になりながらも、私の腕を離さないから…


〇「いたぃっ…」


チカラが入ってしまった先輩の手が緩み、スッと外れた。


望「〇〇 ゴメン!痛かったか?」


私を見ると、その人に向けた口調や表情がウソの様に柔らかくなってる。


どうして??




望「もう…好きやないから…」


痛がった私の腕を労わりながら、その人に背を向け、そう言った先輩は…

状況が掴めなく、キョドってる私の瞳を、すまなそうに見つめた。


☆36☆

女「私と…付き合いたいって…言ってたじゃない?」


弱々しく、そう言うその人は、今にも泣きそうで…

こんな綺麗な人が、泣いてたら、心が揺らぐよな…


なんて思ってしまうほどだ。




望「それは、コイツと出逢う前や。」
女「…だって……泣いた私を抱きしめてくれたじゃん……ッ…」


やっぱり泣いた。


望「それは……好きとかそんな気持ちじゃ……」






てか、私は、何を見せられてるの??




先輩に、その人への気持ちがないなら…

私と出逢って、何かが変わったんなら…







私が…











〇「ハッキリさせてあげるッ!!!」




いきなり私が そう発したから、ふたりの視線を集めた!




さっき先輩がしたみたいに、先輩の手首をバッ!っと強く掴んだ!



そして私は…







_____________________走ったッ!!!


☆37☆


♪〜あなたを奪って とっとと逃げよう
引き返せない 出逢ったんだから
傷つける人いるならなおの事
覚悟決めて あなたを愛そう

あなたを奪って 一緒に逃げよう
いっきに奪って 引き返さない
覚悟決めて あなたを愛そう
奪取しよう 奪取しよう 出逢ったんだから〜♪




〇「っ!私ーーーッ!やっぱりーーーッ!」






〇「っ先輩が!っ!好きぃ〜〜〜〜♡ッ!!!」







おもいっきり先輩の腕を強く掴んで、
おもいっきり速く走って、
おもいっきり大きな声で、
おもいっきり…





想いっきり叫んだ!!!






望「おまっ!声でかいっ!」
〇「ふふっw」




☆38☆


振り返ると…
先輩の手を掴んで走る私を、微笑みで見守ってくれている先輩。


あの人も来ないくらい遠くへ…

走れば走るほど、私と先輩の距離が近くなる気がした。










このまま…ずっとこのままでいたい…













望「ハァハァ…走りすぎやw…ハァ…」


遊歩道の木陰で立ち止まると、


〇「ハァハァ…ごめんなさいww……ふふっ…あははっ!」
望「アホw ふふっw」


笑い合うのが、こんなにも幸せなんだと、私の心に響き渡った。


望「〇〇?今まで曖昧にしててゴメン。」
〇「…何が…ですか?」


先輩の笑顔が、急に真面目になるから、私は少し怖かった。

『NO』って、言われるの……?



望「…//…ずっと、ずっと……お前を…




☆39☆

望「ずっと…お前を守っていきたい//」
〇「えっ?」
望「お前、言ったやろ//…“私の手を離さないでください”って。ずっと…約束やって…」
〇「えっ??」



もしかして…学校内説明会の日…?



望「自分でも信じられなかってん。あんなに好きな人がおったのに…でも、お前が入学してくるのを、心待ちにしとる気持ちがあって、嘘やないって気付いた。」





望「せやけど…俺には前科がある。そう簡単に彼女を作って、お前が周りの奴らにどう思われるのか…心配で…」





やっぱり私、先輩の事…会被ってたんだ。






〇「バカじゃん…そんな ひとりで悩んで…」





〇「私はそんな、一途な先輩が好きなの。だから、振り向いてくれなくても好きだった。」







〇「……でもね…」




☆40☆

〇「側にいたら笑顔を向けて欲しくなる。笑顔を向けられたら触れたくなる。触れられたら…気持ちをコッチに向けたくなる。」






〇「それは、きっと……あの人も同じです。」






〇「優しさで抱きしめたりしたら……逆に傷つくんです……」




自分でも分からない。
どうして あの人をカバうような事を言ってるのか。




望「…嫌われたのか?俺?」
〇「ふふっw んなワケないじゃないですかぁ〜」




っ!!!


望「よかった…」



私を抱きしめ、ホッとした声で呟いた先輩。

その背中に、そっと腕を回した。



望「俺が守るからな。……誰かになんか言われたら…」
〇「はい。」


先輩がいる世界は、ホントに素晴らしくて…

フワッと微笑むその柔らかさが…
ずっと私を守ってくれていた。



ふたりで、あの人に謝りに行って、周りの目も、だんだんと私達を受け入れてくれた。


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