『奪取』
☆31☆
望「おっ!下がっとるやん!w」
はっ!//
そんな風に笑って……♡
……や、ダメだって!
こんなの間違ってる!!!
完全に浮気だからッ!!!
〇「あの!//…私の話し聞いてます?急に何なんですか?」
望「ウッサイなぁ…」
〇「っ//…だって この手!繋いだりしたらダメですよ!私は彼女じゃないんですから!」
望「ウッサイ!熱下がったなら行くぞ!」
〇「は?えっ?何を…」
望「ハッキリさせたるから…」
っ!!!
待って…
きっと私……
『NO』を突きつけられるんだ…
ヤバいよ…もう泣きそ……
コレで最後だから?
だから優しくしてくれたの?
手なんか握って…
バカじゃん…
〇「行かなきゃダメですか……?」
望「おん。お前 連れてくって言ってあるから。」
えっ?誰かと会うの??
☆32☆
スマホを見ると、19時を過ぎたところだった。
先輩は、早足でスタスタと前を行く。
後ろから着いて来ている私になんか気にもしてないみたいだ。
このまま、私だけ帰っちゃっても分からないんじゃないかな…
少し前だったら、先輩に連れ出されるなんて、ウキウキで着いて行ったのに…
でも、どうしてだろう?
こんな気持ちでも、引き返す気には なれない。
ハッキリとはしないけど…
先輩のその背中から感じる何かが、
行かなきゃダメな気がして ならなかった。
『NO』を突きつけられると、分かっていても。
だとしたら、ハッキリさせよう!
曖昧にしていた、私がイケなかったんだから。
私の心は、そんな風に、腰を据え始めていた。
望「お前はココに居ろ。」
〇「えっ…」
公園に入ってすぐの場所に、私を置き去りにして、先輩は奥のベンチに向かった。
☆33☆
「あっ♡望くん♡」
明らかに♡が付いていた声で、パッと明るくなった表情をしたのは、
あの日、先輩が抱きしめていた女の人。
その人が、チラッと私を見ると、表情が一変した。
少し離れた ここからでも聞こえる。
さっきの♡が付いてた声とは全く違う、取り乱している女の人の声。
しばらくして「分かった」と言って、何かを納得した様子だったその人が、私に視線を合わせると、そのまま直視して目の前まで来た。
私はまた、少し後ずさりをしていた。
だって、その目ヂカラと言ったら、怖いとしか言い表せないくらいだったから。
女「望くんに何をしたの?」
〇「え…」
女「どうやって、そそのかしたの?」
〇「っ!あの!チョット待ってください…」
女「望くんはね?私の事をずっと好きだって言ってくれてたの。だから私、望くんにしようと思って…」
やっぱり…
☆34☆
その人は、その後も話し続けた。
先輩に、どれ程 告られたのかを。
その時間が永遠に感じ、気が遠くなりそう…
だから私…
〇「すみませんでした。先輩にはもう、迷惑 掛けませんから…」
手を引く決心をした。
離れたベンチの前から、心配そうに こっちを見ている先輩。
てかさ、、、
私、先輩の事、会被ってたんだ。
こんな男らしくないとは、思わなかった!
自分から、付き合ってるって言わないで、彼女に言わせるなんて!
だったらローファー持って来ないでよ!
熱なんかで心配しないでよ!
手なんか握らないでよ!
抱きしめたり…しないでよ…
嫌い…
そんな先輩…
大っ嫌いッ!!!
後ずさりをしながら、先輩を視界に納めると「さようなら…」と呟きにもならない別れをした。
☆35☆
ッ!!!ガシッ!!!
望「なに勝手に帰ろうとしてんだよ?」
先輩は見たこともない速さで、帰ろうとした私の腕を、また掴んだ。
女「望くん!」
望「うっせーなぁっ!コイツに何言うたッ!」
女「本当の事だよ?どうして?望くん私が好きなんだよね?だから、抱きしめてくれたんでしょ?」
望「はぁ?ちゃうやろっ!」
強い口調になりながらも、私の腕を離さないから…
〇「いたぃっ…」
チカラが入ってしまった先輩の手が緩み、スッと外れた。
望「〇〇 ゴメン!痛かったか?」
私を見ると、その人に向けた口調や表情がウソの様に柔らかくなってる。
どうして??
望「もう…好きやないから…」
痛がった私の腕を労わりながら、その人に背を向け、そう言った先輩は…
状況が掴めなく、キョドってる私の瞳を、すまなそうに見つめた。
☆36☆
女「私と…付き合いたいって…言ってたじゃない?」
弱々しく、そう言うその人は、今にも泣きそうで…
こんな綺麗な人が、泣いてたら、心が揺らぐよな…
なんて思ってしまうほどだ。
望「それは、コイツと出逢う前や。」
女「…だって……泣いた私を抱きしめてくれたじゃん……ッ…」
やっぱり泣いた。
望「それは……好きとかそんな気持ちじゃ……」
てか、私は、何を見せられてるの??
先輩に、その人への気持ちがないなら…
私と出逢って、何かが変わったんなら…
私が…
〇「ハッキリさせてあげるッ!!!」
いきなり私が そう発したから、ふたりの視線を集めた!
さっき先輩がしたみたいに、先輩の手首をバッ!っと強く掴んだ!
そして私は…
_____________________走ったッ!!!
☆37☆
♪〜あなたを奪って とっとと逃げよう
引き返せない 出逢ったんだから
傷つける人いるならなおの事
覚悟決めて あなたを愛そう
あなたを奪って 一緒に逃げよう
いっきに奪って 引き返さない
覚悟決めて あなたを愛そう
奪取しよう 奪取しよう 出逢ったんだから〜♪
〇「っ!私ーーーッ!やっぱりーーーッ!」
〇「っ先輩が!っ!好きぃ〜〜〜〜♡ッ!!!」
おもいっきり先輩の腕を強く掴んで、
おもいっきり速く走って、
おもいっきり大きな声で、
おもいっきり…
想いっきり叫んだ!!!
望「おまっ!声でかいっ!」
〇「ふふっw」
☆38☆
振り返ると…
先輩の手を掴んで走る私を、微笑みで見守ってくれている先輩。
あの人も来ないくらい遠くへ…
走れば走るほど、私と先輩の距離が近くなる気がした。
このまま…ずっとこのままでいたい…
望「ハァハァ…走りすぎやw…ハァ…」
遊歩道の木陰で立ち止まると、
〇「ハァハァ…ごめんなさいww……ふふっ…あははっ!」
望「アホw ふふっw」
笑い合うのが、こんなにも幸せなんだと、私の心に響き渡った。
望「〇〇?今まで曖昧にしててゴメン。」
〇「…何が…ですか?」
先輩の笑顔が、急に真面目になるから、私は少し怖かった。
『NO』って、言われるの……?
望「…//…ずっと、ずっと……お前を…
☆39☆
望「ずっと…お前を守っていきたい//」
〇「えっ?」
望「お前、言ったやろ//…“私の手を離さないでください”って。ずっと…約束やって…」
〇「えっ??」
もしかして…学校内説明会の日…?
望「自分でも信じられなかってん。あんなに好きな人がおったのに…でも、お前が入学してくるのを、心待ちにしとる気持ちがあって、嘘やないって気付いた。」
望「せやけど…俺には前科がある。そう簡単に彼女を作って、お前が周りの奴らにどう思われるのか…心配で…」
やっぱり私、先輩の事…会被ってたんだ。
〇「バカじゃん…そんな ひとりで悩んで…」
〇「私はそんな、一途な先輩が好きなの。だから、振り向いてくれなくても好きだった。」
〇「……でもね…」
☆40☆
〇「側にいたら笑顔を向けて欲しくなる。笑顔を向けられたら触れたくなる。触れられたら…気持ちをコッチに向けたくなる。」
〇「それは、きっと……あの人も同じです。」
〇「優しさで抱きしめたりしたら……逆に傷つくんです……」
自分でも分からない。
どうして あの人をカバうような事を言ってるのか。
望「…嫌われたのか?俺?」
〇「ふふっw んなワケないじゃないですかぁ〜」
っ!!!
望「よかった…」
私を抱きしめ、ホッとした声で呟いた先輩。
その背中に、そっと腕を回した。
望「俺が守るからな。……誰かになんか言われたら…」
〇「はい。」
先輩がいる世界は、ホントに素晴らしくて…
フワッと微笑むその柔らかさが…
ずっと私を守ってくれていた。
ふたりで、あの人に謝りに行って、周りの目も、だんだんと私達を受け入れてくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。