第55話

番外編:盛夏 氷菓 君の香り
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2021/08/07 06:00
文月が終わり、葉月に入ったある日、あなたは手で顔を仰ぎながらこう呟いた。
神月あなた
最近暑いですねえ。
冨岡義勇
そうだな。
暑いのは、苦手だ。
神月あなた
あ、そうだ。
近くに甘味処が出来たらしいですよ。
そこまで出かけません?
冨岡義勇
…そうだな。
行くか。

正直、盛夏の空の下を出歩くなんてあまり乗り気にはなれなかったが、あなたのきらきらした瞳に捕えられれば、首を横に振るなんて出来るはずがなかった。
神月あなた
じゃあ、準備してきます!
待っててください!

あなたは笑みを浮かべて走り去っていった。

残された俺の鼻腔をくすぐる、あなたの、残り香。

甘く、それでいて匂いなどすぐに薄まってしまいそうな、儚い匂い。

暫しの間ぼうっとしていると、あなたが戻ってきた。
神月あなた
お待たせしました。
冨岡義勇
嗚呼、行こうか。

外に出て歩いていると、やはり刺すような日差しに当てられ、俺は目眩を起こしそうになる。

しかし、思っていたより近かった甘味処への距離とあなたの楽しそうな笑顔で、何とか倒れることなく甘味処まで到着することが出来た。

神月あなた
こんにちは!

「いらっしゃいませ。
お好きなお席にどうぞ。」

そう言われ、あなたが選んだのが、奥の座敷だった。

あなた曰く、「落ち着くじゃないですか。」らしい。

席に着くと、先程の店員が品書きを持ってきた。
神月あなた
あ、私、氷菓にします。
義勇さんは?
冨岡義勇
俺も同じのでいい。

「かしこまりました。
お待ちくださいね。」
神月あなた
楽しみですねえ。
涼しくなりそう。

しばらく取り留めない話をしていると、氷菓が運ばれてきた。
神月あなた
うわぁ、美味しそう。

にこにこしながらあなたは匙をとる。
氷をすくい、口に運んで目尻を下げる。

愛おしくて、じっと見つめていると、あなたは顔を上げた。
神月あなた
義勇さん?
溶けちゃいますよ。
冨岡義勇
そうだな。

俺も匙をとり、氷を口に運ぶ。
ひんやりとした空気が口の中に入ってきて、体温が下がる。

ここに来たのは、正解だった。




──────────
数十分後。

神月あなた
ご馳走様でした!

あなたと帰路を辿る。
隣から、ふと香ってきたのは、甘く、儚い、あなたの香りだった。




🌸auteur🌸
🌸auteur🌸
全然更新出来なくて申し訳ないです💦
ちなみに、この話で出てくる「氷菓」は、かき氷のことですね。
タイトルは語呂がいいように工夫したつもりなんですけど…難しいですね。
もっとキャッチーなタイトル考えられるよう精進します!

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