柚木「こ、こんにちは……」
『は、はぁ……』
何故こんなことになったんだろう……
遡ること6時間目が終わってすぐ。
千冬「お前と俺の彼女、絶対気合うって!」
なんて千冬が言い出したもんで
『い、いやッ!会わなくて大丈夫!!うん!大丈夫だから!!!』
私はそう言って必死に断ったんだけどなぁ……
だって、私が千冬の彼女にあったら泣いてしまいそうで……
私なんて千冬好き歴10年なんだから!!なんて、マウントを取りたくなってしまうし
なのに千冬はそんな話も忘れて、平然とした顔で私に自分の彼女を紹介してきたのだ。
千冬「こいつ、柚木っていうんだ。1個年下な」
なぜ千冬がこの子についての説明をしているのかを私は知りたいのだが、表情をみれば得意そうに話しているからそんなことは口が裂けても言えない。
千冬の彼女、柚木ちゃんは私と千冬より一つ下の学年で、ふわふわした女の子でおまけに声まで可愛い。
確かにこれは千冬も惚れるわけだ……と。
それに比べて私は少し低い声に、ふわふわした雰囲気もない女。
『よろしくね…?柚木ちゃん』
なんて、別によろしくしたくもないけれどそう言ってしまう私にはすごく吐き気を覚える。
私がそう言って手を差し伸べると嬉しそうに
柚木「はいッ!先輩!」
そう言って私の手にきゅっと握手をした柚木ちゃん。
先輩か…なんだか言われ慣れない響きに照れてしまう。
だが忘れちゃいけない、私は今日これで正式に
失恋したことになる_____
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。