【シルクsaid】
しばらく歩いて着いた先は
あなたの下の名前の墓がある場所
墓石を抱きしめようとしたが
血でべっとりと汚れた手で触るのは気が引けた
その瞬間
ぽつぽつと雨が降ってきた
神様がこんな最低な俺にくれた
最後の贈り物かもな
雨で手のひらの血を落として
墓石をなでて抱きしめた
ひんやりとした石の感触が
手のひらに伝わる
片手に持っている包丁からぽたぽたと
血と雨が混ざった水滴が草むらに垂れる
遠くからサイレンの音が聞こえた
音はだんだん近づいてくる
あいつの血にまみれた包丁を
自分の腹に突き刺した
わずかな力でぐりぐりとねじ込むと
だらだらとあたたかい血が流れてくるのを感じた
視界がぼやける
そっと目を閉じた
『俺のストーカーは』end
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。