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第1話

友達の彼女 ~シゲ~
499
2021/06/13 14:27
~シゲ‘s  side~


あなた
今度こそ、絶対に別れる
もう何百回と聞いてきたセリフ
シゲ
とか言って、結局別れんくせに
あなた
今度は本気なの

そう言って、テーブルの上の缶チューハイを飲み干す。

シゲ
あいつと喧嘩する度、うちでやけ酒すんの、止めや

あなたは彼氏と喧嘩する度、こうして俺に愚痴を言いにくる。



口ではめんどくさいって言うけど、ホンマは嬉しいんのはあなたには言われへん。

あなた
いいじゃん、どうせ暇でしょ
シゲ
暇やないわ、俺かて予定あるし
あなた
なんの?
シゲ
デ、デートとか?
あなた
相手もいないくせに

鼻で笑って、本日3本目の缶を開けとる。
シゲ
たくさんおるわ、アホ。こう見えて結構モテるんやで
あなた
じゃあ、何で彼女作らないの?

作らないんやなくて、作れないんや。


そうは思っても口には出せん。
あなた
シゲ、そこそこ格好いいし、優しいし。お買い得なのにね。
シゲ
俺は物やないし、そこそこ言うな

ほな、もらってくれや。


今なら熨斗つけてやるわ


冗談でも口に出せない想い。

あなた
私、シゲみたいな人好きになれば良かったのにね。
シゲ
なんやそれ
あなた
シゲっていつも優しいよね。あいつなんて我が儘ばっかり

優しいんはお前にだけや。


他の奴なんてどうでもええ。


それすら、気づいてないやろ。
シゲ
選んだのはお前やろ
あなた
だって、好きになっちゃったんだもん。

よりによって、俺の親友、好きになることないやろ。



奪いたくても、奪えないやん。

あなた
惚れたら負けって、その通りだね。

そうや、惚れちまったら負けなんや



それは一番俺がよく分かっとる。

3本目の缶を飲み干して、うとうとし始めた頃になるスマホ


誰って聞かんでも、着信の画面を見た顔で分かる。
シゲ
さっさと行けや

帰るわって言われる前に俺から突き放す。



ホンマはあいつのとこに帰したくないけど
あなた
うん、いつもありがと

その笑顔も俺のものにはならへんのやな。

なんで、あいつやなきゃダメなんやろ。



なんで、俺やなかったんやろ。

たくさんの『なんで』を重ねても、答えが出るわけなくて、



長い夜がふけていく。

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