~シゲ‘s side~
もう何百回と聞いてきたセリフ
そう言って、テーブルの上の缶チューハイを飲み干す。
あなたは彼氏と喧嘩する度、こうして俺に愚痴を言いにくる。
口ではめんどくさいって言うけど、ホンマは嬉しいんのはあなたには言われへん。
鼻で笑って、本日3本目の缶を開けとる。
作らないんやなくて、作れないんや。
そうは思っても口には出せん。
ほな、もらってくれや。
今なら熨斗つけてやるわ
冗談でも口に出せない想い。
優しいんはお前にだけや。
他の奴なんてどうでもええ。
それすら、気づいてないやろ。
よりによって、俺の親友、好きになることないやろ。
奪いたくても、奪えないやん。
そうや、惚れちまったら負けなんや
それは一番俺がよく分かっとる。
3本目の缶を飲み干して、うとうとし始めた頃になるスマホ
誰って聞かんでも、着信の画面を見た顔で分かる。
帰るわって言われる前に俺から突き放す。
ホンマはあいつのとこに帰したくないけど
その笑顔も俺のものにはならへんのやな。
なんで、あいつやなきゃダメなんやろ。
なんで、俺やなかったんやろ。
たくさんの『なんで』を重ねても、答えが出るわけなくて、
長い夜がふけていく。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!