第4話

|うれしい
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2018/04/01 14:26
_ どうも、あなたちゃん。

片手に私の好きなケーキ屋さんの袋を持ち、軽く微笑む彼。私はどうすればいいか分からず、どうも、とだけ返事をした。すると彼は近付いて来て、私のベッドの隣のイスに座った。優しい雰囲気を持つ彼に、出会って少しなのに安心感を覚えた。

_ こうして直接話すのは久しぶりだね

_ 久しぶり...?

_ ...やっぱり覚えてないよね。いきなりで驚くと思うけど... 僕達は付き合っていたんだ。

_ 付き合ってた...⁈

_ ...うん。いきなりでごめんね。“初対面”の人に言われても困るよね。

_ ううん、大丈夫...。

_ でも、僕達の最近の関係はあまり良くなかったんだ。お互いにすれ違って、喧嘩ばかりしてた。

_ そう...だったんだ。

_ 僕もまだ信じられないけど...もし時間があったら、これからの2人の関係をどうするか、考えておいてくれるかな。

_ ...うん。

私は記憶に残っていない、今となっては見知らぬ彼ともう一度付き合いたいとは思わなかった。だってもう私の中では初対面の他人なのだから。その方が彼も幸せになれると思った。

少しの間、何気ない会話を交わしてから彼は“また来るから”と言って病室を後にした。

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