瑞希視点
ボクは、その次の日からニーゴで活動することも、
学校に行くことも拒むようになった。
杏や冬弥くん、あなたが家に来たって
出ることもなくただ、家に引きこもって
適当にネットで時間を過ごしていた。
時間を潰してるだけだから、適当に会話してる。
こんな話興味なんて無い。
フレンド申請も送らず、送られても断って
行き当たりばったりネットの人と会話してた。
許可する。なんて言っておいて
許可しないのがボク。
だって関わったって意味ない。どうせ
ボクの事を知ったとき嫌われるのが分かってる。
ボク、なにしてんだろ。
このアプリで誰かと話しても
絵名みたいに面白くもない。
奏でのように対して優しくもない。
まふゆはいつも冷たくてもツッコんでくれてボクと絵名の会話に入ってきたり、
まふゆは絵名の絵に文句いったり(笑)
ほんと、ボクを除く皆は、それぞれに性格があって
ニーゴはバランスがとれてた。
【れい】か。
男の子、女の子。どっちでもとれる名前だ。
なんだか、ぐいぐい来る人と当たった。
面倒だな。話したくないことだってあるのに、
なんでこの人に教えなきゃいけないんだろう。
でも無視したら、なにかされそう。
どうせ関わることもないし適当に........
ネットにもボクと同じような人がいることが
れいさんと会話して分かった。
気軽に話せる?
そんな事無い。気軽に話せるなら絵名の言葉に
答えれるはずなんだ。
でも話せてない。ネットは
気軽に話せるような場所じゃない。
れいさんには全てお見通しだったよう。
同じ立場って皆そういうものなのかな。
だってあなたも同じような気持ち抱えてたし。
この人。どうしてこんなに優しくするんだろ。
所詮ネットなのに。
だってそんな深い関わりもないはずなんだ。
なのに、どうして。
れいさんはそう言ったときオフラインに
なったことが分かった。
アイコンに緑マークがつくときは
オンライン、無くなったときはオフライン。
『待ってるよ』って何のことだろう。
それに名前の意味なんて分かるわけ無い。
でも、こんな薄っぺらい会話だったけど
なんだかれいさんの言うことは全部
本当の事を言ってるような気がして
『あなたも大丈夫。一人じゃない』
って伝えたいのか。ボクのなかでは
そんな気がしてる。
だから?もしかしてそれを伝えるために
男女どちらか分からないように?
男子の悩みも女子の悩みも、
トランスジェンダーのボクみたいな人にも
『一人じゃない』って伝えるために?
だとしたら、凄く優しい人だ。
絵名に応えたい。大丈夫。
れいさんは理解してくれるって言った。
れいさんはきっと、ボクが進めるように
してくれたんだ。それにも応えたい。
この気持ちがどういうものかも分からなかった。
意味のない会話だと思う。
こうやって会話したところでってまだ思う。
だけどただ一つ。
薄っぺらい会話のなかで、ボクは
大切な物をもらった気がした。
ボクは無心でフレンド申請を送った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。