第18話

2章 五話
454
2023/07/08 02:43
瑞希視点
ボクは、その次の日からニーゴで活動することも、
学校に行くことも拒むようになった。
杏や冬弥くん、あなたが家に来たって
出ることもなくただ、家に引きこもって
適当にネットで時間を過ごしていた。
暁山瑞希
暁山瑞希
........面白くないな。
暁山瑞希
暁山瑞希
『うんうん、それで?』
梨乃亜
『でさぁ~友達が~』
時間を潰してるだけだから、適当に会話してる。
こんな話興味なんて無い。
フレンド申請も送らず、送られても断って
行き当たりばったりネットの人と会話してた。
暁山瑞希
暁山瑞希
『ごめん!用事ができちゃった。
 またね!!!』
梨乃亜
『はーい!フレンド申請しとくね!』
暁山瑞希
暁山瑞希
『許可しとくよー!』
許可する。なんて言っておいて
許可しないのがボク。
だって関わったって意味ない。どうせ
ボクの事を知ったとき嫌われるのが分かってる。
ボク、なにしてんだろ。
このアプリで誰かと話しても
絵名みたいに面白くもない。
奏でのように対して優しくもない。
まふゆはいつも冷たくてもツッコんでくれてボクと絵名の会話に入ってきたり、
まふゆは絵名の絵に文句いったり(笑)
ほんと、ボクを除く皆は、それぞれに性格があって
ニーゴはバランスがとれてた。
暁山瑞希
暁山瑞希
考えても無駄だ。
暁山瑞希
暁山瑞希
次の人にあたろうかな。
【れい】か。
男の子、女の子。どっちでもとれる名前だ。
れい
『こんにちは』
暁山瑞希
暁山瑞希
『こんにちは』
れい
『なにしてますか?』
暁山瑞希
暁山瑞希
『学校行かずに時間潰してる。』
れい
『そうなんだ。学校行かなくて
 いいんですか?』
暁山瑞希
暁山瑞希
『うん。学校にいったとて
 なにも楽しく感じないから。』
れい
『それは、どうしてですか?』
なんだか、ぐいぐい来る人と当たった。
面倒だな。話したくないことだってあるのに、
なんでこの人に教えなきゃいけないんだろう。


でも無視したら、なにかされそう。
どうせ関わることもないし適当に........
暁山瑞希
暁山瑞希
『誰からも理解されなくて
 おかしいって思われるから。』
れい
『kimizuさんは、なにか
 悩みでもあるんですか?』
暁山瑞希
暁山瑞希
『ボクは自分の好きなボクで
 いたいから、スカートを
 履いて、自分が可愛いって
 思う男子。』
暁山瑞希
暁山瑞希
『気持ち悪いでしょ?』
れい
『奇遇ですね。私も同じです。』
暁山瑞希
暁山瑞希
『え?』
れい
『kimizuさんとは、気が
 あいそうな気がします。』
ネットにもボクと同じような人がいることが
れいさんと会話して分かった。
れい
『ネットって良いですね。
 気軽に話せて。』
気軽に話せる?
そんな事無い。気軽に話せるなら絵名の言葉に
答えれるはずなんだ。


でも話せてない。ネットは
気軽に話せるような場所じゃない。
暁山瑞希
暁山瑞希
『ボクはそう思いませんけどね。』
れい
『ずいぶん、悩んでますね。
 誰も理解してくれないって
 言ってますけど、本当ですか?
 誰か理解者は
 いるんじゃないですか?』
暁山瑞希
暁山瑞希
『少しはいるけど。』
れい
『本当はその人を
 大切に思ってて、優しい方で。
 kimizuさんは理解してくれる人が
 欲しいだけなんですよね?
 でも言うのが怖くて距離とって。』
れいさんには全てお見通しだったよう。
同じ立場って皆そういうものなのかな。
だってあなたも同じような気持ち抱えてたし。
暁山瑞希
暁山瑞希
『そうかもね。』
暁山瑞希
暁山瑞希
『ボク最近さ、理解してくれる子に
 好きな人が出来たらしくて
 嬉しいのに、置いて行かれたような
 気がして、関係ない人とも
 距離を置いたんだよね。
 他の大切な人にも伝えたいって
 思うんだけど、
 怖くて言えなくて。』
れい
『よくあります。そういうの。
 置いてかれたら、話したら
 その大切な人が自分の周りから
 いなくなりそうで
 怖いんですよね。でも私は
 思い切っていったんです。
 そしたら理解してくれたんです。
 私はその性別って事だけで
 離れる人は所詮そんなもんって
 思うんです。本当に大切って
 お互い思ってるなら、
 kimizuさんを理解してくれます。
 私が保証します。もし理解して
 もらえなかったら私は
 自殺を試みます。無責任な事を
 言ってしまったことになるの
 ですから。』
この人。どうしてこんなに優しくするんだろ。
所詮ネットなのに。
だってそんな深い関わりもないはずなんだ。
なのに、どうして。
暁山瑞希
暁山瑞希
『どうして、ボクの事を知らない
 れいさんが、そんなにボクに
 世話をやくんですか?』
れい
『さぁ。自分で当ててみて。
 ともかく、kimizuさんは
 きっと理解してくれる人が
 多くいる。大丈夫。
 話してみたら案外
 理解してくれるから。』
れい
『れいって名前。男か女か
 わかんないでしょ?
 これね意味があるんだ。
 私が男か女か分からないように
 するためでもあるんだけど、』
れい
『あなたなら分かるかな?
 じゃあ。またね。』
れい
『待ってるよ。』
れいさんはそう言ったときオフラインに
なったことが分かった。
アイコンに緑マークがつくときは
オンライン、無くなったときはオフライン。
『待ってるよ』って何のことだろう。
それに名前の意味なんて分かるわけ無い。
でも、こんな薄っぺらい会話だったけど
なんだかれいさんの言うことは全部
本当の事を言ってるような気がして

『あなたも大丈夫。一人じゃない』

って伝えたいのか。ボクのなかでは
そんな気がしてる。
だから?もしかしてそれを伝えるために
男女どちらか分からないように?


男子の悩みも女子の悩みも、
トランスジェンダーのボクみたいな人にも
『一人じゃない』って伝えるために?


だとしたら、凄く優しい人だ。
絵名に応えたい。大丈夫。
れいさんは理解してくれるって言った。
れいさんはきっと、ボクが進めるように
してくれたんだ。それにも応えたい。


この気持ちがどういうものかも分からなかった。
意味のない会話だと思う。
こうやって会話したところでってまだ思う。
だけどただ一つ。
薄っぺらい会話のなかで、ボクは
大切な物をもらった気がした。


ボクは無心でフレンド申請を送った。

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