杏視点
ストリートのどこを探しても見つからない。
私の勘違いだったのかな。
いや違う。きっとあなたはストリートの
どこかに居るはずだ。
私達は父さんが経営してる店に行って
父さんに事情を話した。
父さんは許してくれて、私達はご飯を食べる。
どこにいるだろう。ご飯を食べながらも考えた。
そういえば、まだ私が小さくて、凪さんとよく
過ごしてたときに、隠れんぼしてた時。
凪さんがとっておきの場所を教えてくれて。
すっごく綺麗な場所だった。
そうなんだけど。探したいんだけど。
あなたのお姉さんだからなのか分からないけど
何となく、あなたと同じで、どこか悩んでそう。
あの笑い方。私があなたを始めて見たときと
同じ笑い方だし。
やっぱり、あなたの言う通り
何事もお母さんが厳しくて、お姉さんも
あんな風になるんだろうな。
私にはあなたの苦しさも分からないけど。
あなたにとってお姉さんが大切な存在なのは
分かってる。だから。
あなたを見つけて、お姉さんに会わせないと。
私たちは店をでて、急いで走った。
走って数分の所には楽器屋がある。
建物には梯子がある。
あの時の記憶と外装は一致する。
ちょっと色が剥げてたり、落ちてたりするけど。
けど、ここだ。
あ...........あれって。
私の目には、目を閉じて
倒れている、あなたの姿があった。
梯子のせいで、運ぶのはムズそう。
あなたのおでことか触っても
暑くないし、心臓も動いてる。
でも、何だか息苦しそう。
でも、ここから運ぶには無理だから。
仕方ない。
少し体を揺すると、あなたはバッと起き上がった。
そっか。あなたのお姉さんも
帰らなきゃ行けないもんね。
どこか、言い方が冷たい。
けど。あなたの事を大切に思ってくれてるのは
分かる。
お姉さんはあなたに幸せになって欲しいって
思ってくれてるんだろうな。
あなた視点
お姉ちゃん行っちゃった。
私の性別の事伝えろって言いたいの?
言いたいと思う。
でも...........!!
類も、瑞希も。
側にいてくれなくなるかも知れない。
それに、杏も。
大切な物が全て無くなるかも知れない。
また、迷惑がかかってる。
今回は、こはねや彰人。冬弥まで。
もう、私言わないといけない。
これ以上迷惑かけないためにも。
なんで...........こんなに迷惑かけてるのに
杏も瑞希も、類も。私のこと一番に
考えてくれるのかな...........
これだから、話しづらくなるのに。
なのに...........!!
私の事を話して、性別の事なんて、
何も気にしないで活動したいって思う。
ほら。やっぱりこうなる。
こはね、彰人と冬弥とバイバイかな。
皆、困らせちゃった。
彰人なんか喋ってくれない。
こんな奴と関わりたく無いよね。
そりゃそうかww
普通に考えて、周りから見たら
『気持ち悪い』よねw
私、このままでいいのかな。
また迷惑かけるかも知れないのに。
それは...........
暗いなんて、私向いてないかも...........?
ビビバスの一員で。
屋上組の一員で。
私は、瑞希の耳元で小さく
囁いた。
瑞希がちゃんと進めることを祈ってる。
私が進むのに、瑞希に手伝って貰ったんだから。
次は、私が手伝って上げれたら。いいな。
私みたいに性別で悩む人が一人でも
少なくなってくれる世界を望む。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。