「お前、面白いな」
目に浮かべてた涙を白く細い指先で拭いながら
笑顔を浮かべてる不良はそう言った。
なんか……うん……
不良でもこんな綺麗な笑顔を見せるんだ、、
私の想像してた不良は、眉毛を細くし、常に眉間にシワを寄せているイメージだった。
「お前、" miyo " だろ?」
散々笑ってやっと収まったのか、不良は
突然そんなことを言い出す。
私はビクッとする。
miyo……それは私がネッ友と交流するチャットで設定している名前だからだ
「ナ、ナンノコトデスカ?」
カタコトになりつつも、私はしらを切る。
「嘘ついても無駄だぞ。証拠は全て揃ってるんだからなぁ」
前言撤回。
この、不良はただのどこにでもいる不良だ
不良は、miyo つまり私とのチャットを見せ、
どこか誇らしげに私を見つめる。
「こ、この会話ッ!」
この不良は、私がチャットで連絡を取っていた
イラストレーターの " シン " だった。
間違いない。
連絡の内容だって名前だってそう。
「え……この不良が、、シン??」
「そう。俺がシン。」
ま、まてまてまて……状況確認しよう。
えっと、転校してきた隣の席のこの不良は
私とチャットで連絡を取っていたシンで……
「え、いつから気づいてたの?」
「最初から知ってた。この学校に来たのもmiyo…いや、音羽 海夜に会いたかったからだ」
そして、昼寝しようと中庭に来たら先客がいて
よく見るとそれが私だったとか……
「海夜。いきなりすぎてビックリしてると思うが俺はお前に会えて嬉しい。これからは郁斗って呼べよ」
すると突然小っ恥ずかしいことをスラっと言う
郁斗。
だけど、そんな郁斗の暖かい笑顔を向けられると 私も釣られて笑顔になる。
一緒にいると温かい……
やっぱり郁斗はシンなんだ……
「うん!こちらこそよろしく」
今までは人と関わることを避けていた。
だけどそれは、無理やり何かの理由をつけ
ただ自己防衛をしていただけなのかもしれない
私は知らない。
この目の前で 青くすみわたる空を見上げている郁斗が、私の人生を変えることになるなんて
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。