第29話

最後の決意 - 凛&光 -
32
2018/07/07 07:34
私は光の胸でたくさん泣いた。

クリスマスなのに…、楽しい時間になると思っていたのに…。

こんな事になるなんて思いもしなかった。

「光…」

かすれた声で呼ぶと光は下を向いて

「ん?」

と優しく言う。

「私ね、この前中川さんと会ったの…」

「え?中川って、中川七海?」

「うん…」

「それで、どうしたんだよ?」

私はあの日のことを軽く話した。

─────

デートが終わり、帰り道を歩いていると

中川さんと出くわした。

「なんか…ひ、久しぶりだね…?」

中川さんは前とは違い少し微笑ましい感じだった。

「中川さん…、久しぶりだよホントに」

そして私たちは近くの公園のベンチに座った。

「私ね、隣町の高校に移動したの。」

「え?そうなんだ…、心配してたんだよ?
それで?」

「私、そこで目指すものを見つけることが出来たんだ…。」

「目指すもの?」

「うん、福祉…。」

「…ふ、福祉…って?」

私は福祉をあまり知らなかったから中川さんが説明してくれた。(まあ、聞いたことはあるけどね!?)

福祉は、主に介護。
老人ホームで働く人だ。

「すごい…!もう、夢が決まってるんだね!
中川さん、頭いいから絶対なれるよ!」

私がガッツポーズを見せながら元気に言うと

「頭いいだけじゃー、ダメなのよ?」

「へ?そ、そうなの?」

「ええ、介護は広い心も必要だし。特に、睡眠をあまり取れないの。」

「あ、そっか。おじいちゃん達のお世話するから…」

「うん、でもね、それもいいかなって」

中川さん、大人びたな…。

背はもともと私より高かったから余計大人に見える。

やっぱり、高校生となればこのくらい普通なのだろう…。

私はどうだろうか…?
ちゃんと高校生に見えてる?
大人びてる…?

「それじゃあ、買い物の途中だったから。
また会えたらいいわね。」

「うん!久しぶりに楽しかった!」

「ええ、それじゃあね」

よっこいしょと私もベンチを立ちそのまま家へと帰った。

─────

「…って言うことがあったんだ」

「そっか、中川も自分の道見つけたんだな」

「うん、だからね…」

「うん?」

「私にも、見つけられるかな。
新しい道…」

光はしばらく考えてうなづいた。

「ああ、できるよ?だって凛さ、どこでも生きていそうじゃん?」

「それイヤミ?」

「違うって!まぢでさ、勢いで生きていそうじゃん」

「…そうかな?」

「…うん、絶対そう」

「そ…か、じゃあ見つけてみよう…。
自分の道。」

「ん、」

そして再び沈黙が…。
そして、光は真面目な顔で私を見た。

「話があるんだ」

突然の言葉だったけど、私は自然とドキッとした。

(何か真面目な話なのだろう…)

そう考え、私も真正面に向かった。

「俺、苗と別れてから色々考えたんだ…。

最初は、自分の気持ちで振り回してしまうと思って避けてた…。
でも、無理だったんだ。

俺の気持ちはもうとうに決まってた…」

「光…の、気持ち…?」

光は顔を赤らめて言った。

「俺、凛が好きだ。」

私の聞きたかった言葉なのかもしれない…。
いや、信じてた自分がどこかにいたんだ。

私はつい光に抱きついた。

「私もね、好きだよ?
ずっと、ずっとね…す、好きなんだよ…?」

私はさっき泣いたばかりだったのに、またボロボロ零れてきた。

でも、今の涙はさっきの悲し涙じゃない…
嬉し涙だ…。

嬉しすぎで溶けてゆきそう…。

そして、温かい。

光はいつの間にか私に腕を回し、抱き合っていた。

すき…すき。
光がすき…。

私、両思いになれたんだ…!
光と恋人になれたんだ…!

今の私はもう、弱虫なんかじゃない…。
泣いてばっかりじゃダメなんだね…。

前を向かないといけない。
光との未来を…

" この先の未来を…

この人と作っていくんだ "


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心を通わすことのできた光と凛。

幸せな瑠夏と奈々。

すれ違う莉久と圭。

次回、莉久に近づく男の影が…

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