僕は見た。
「でも…好きでいさせてね…。」
それは好きな人が好きな人に伝えた言葉だった。
(こんなの…見たくなかったな)
保健室で寝込んでいる大沢くんの手を握る凛ちゃんは恋してる…顔だった。
凛ちゃんが大沢くんを好きになったのはいつなのだろう…
僕がいない時だろうな…
僕は、昔から好きだ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
幼い頃。
「凛ちゃ~ん!待ってよ~」
なるは足が遅く、凛に追いつかない。
「なる!おっそ~い!」
凛となるは昔から行く海があった。
親同士が仲が良く、毎年夏に行く海は特別。
なるは凛がその頃から特別な存在。
「凛…ちゃん…ハアハア」
「なる!着いたぞ!」
「…へ?」
疲れきったなるに比べて元気な凛。
「ここ!私達の秘密基地にしよう!」
「…は?」
そう。
着いたのは、海辺の奥にある洞窟だった。
「ここ、暗くて…怖いよ…」
「大丈夫!私がいるでしょ??」
凛はなるの手を握った。
手の温もり…。
(えへへ…)
「あ!」
「え!?」
「そろそろ帰ろ!」
「は、早くない?」
凛の言葉に戸惑うなる。
凛は、洞窟が行き止まりって事に気づいたらしい。
そして、ポケットに入っているあるものを洞窟の石の下に置いた。
「それ、なぁに?」
聞けと凛は照れながら言った。
「あのね、10年語また来る時にねふたりで見よう!」
「う、うん!」
「「 約束! 」」
そして、その約束は果たすことなく。
忘れられていたんだ。
まるで…僕の事をわすれたみたい…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺は、不思議な夢を見た。
「光くんは、」
「苗…?」
「伊野さんが好きなんじゃないかな?」
「…は?凛を…?」
「私には抱いてくれなかった想いだけど…、光くんには幸せになって欲しい。」
「で、でも…俺は」
「分かってる。でも、もう自由になっていいよ。その…、縛られた羽を大きく開いて自由に飛ぶの。」
「……ッ」
そして、俺は目が覚めた。
「……え」
その横にいたのは、凛だった。
「ひ、光…?なんで、泣いて」
「…は、え?」
目をこすると手に水が付いた。
いや、水じゃない。
俺の涙だ…
「だ、大丈夫…?」
心配そうに見つめる凛。
よく見ると、凛もいい顔立ちしてるんだな…
可愛い…
「光?」
「…は!?」
「え?」
不思議そうに見る凛。
俺、今…
凛をかわいいって思った…?
「え…と?」
「ダダ大丈夫だ!」
「そう?なんか、変だなー」
「気のせいだろ!へへっ」
そして、成瀬が来た。
「何何~?ふたりで何してんの?」
「何もねーよ」
「話してただけー」
そして、成瀬は少し悲しい顔をしていた。
(…?)
「あ、そういえば。
大沢くんは、寝不足だからちゃんと寝なよ。
劇の練習中止になったんだから」
「え!?まぢ?早く寝ないと!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…もう寝たよ。」
「ほんと…早いな」
凛ちゃんは安心したような顔をしている。
きっと、大沢くんが目を覚ましたからなんだ。
僕の恋は叶わない。
でもいいんだ…。
凛ちゃんの隣で…
隣にいるだけでいい
だから…
だから、どうか。
僕の居場所を誰にも譲らないでね。
──────
自分の気持ちに気付いた光。
そばにいるだけでいいと願うなる。
そして、凛は?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。