第10話

スキダ - なる -
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2018/05/20 13:37
僕は見た。

「でも…好きでいさせてね…。」

それは好きな人が好きな人に伝えた言葉だった。

(こんなの…見たくなかったな)

保健室で寝込んでいる大沢くんの手を握る凛ちゃんは恋してる…顔だった。

凛ちゃんが大沢くんを好きになったのはいつなのだろう…

僕がいない時だろうな…

僕は、昔から好きだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

幼い頃。

「凛ちゃ~ん!待ってよ~」

なるは足が遅く、凛に追いつかない。

「なる!おっそ~い!」

凛となるは昔から行く海があった。

親同士が仲が良く、毎年夏に行く海は特別。

なるは凛がその頃から特別な存在。

「凛…ちゃん…ハアハア」

「なる!着いたぞ!」

「…へ?」

疲れきったなるに比べて元気な凛。

「ここ!私達の秘密基地にしよう!」

「…は?」

そう。
着いたのは、海辺の奥にある洞窟だった。

「ここ、暗くて…怖いよ…」

「大丈夫!私がいるでしょ??」

凛はなるの手を握った。

手の温もり…。

(えへへ…)

「あ!」

「え!?」

「そろそろ帰ろ!」

「は、早くない?」

凛の言葉に戸惑うなる。

凛は、洞窟が行き止まりって事に気づいたらしい。

そして、ポケットに入っているあるものを洞窟の石の下に置いた。

「それ、なぁに?」

聞けと凛は照れながら言った。

「あのね、10年語また来る時にねふたりで見よう!」

「う、うん!」

「「 約束! 」」

そして、その約束は果たすことなく。

忘れられていたんだ。

まるで…僕の事をわすれたみたい…


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

俺は、不思議な夢を見た。

「光くんは、」

「苗…?」

「伊野さんが好きなんじゃないかな?」

「…は?凛を…?」

「私には抱いてくれなかった想いだけど…、光くんには幸せになって欲しい。」

「で、でも…俺は」

「分かってる。でも、もう自由になっていいよ。その…、縛られた羽を大きく開いて自由に飛ぶの。」

「……ッ」

そして、俺は目が覚めた。

「……え」

その横にいたのは、凛だった。

「ひ、光…?なんで、泣いて」

「…は、え?」

目をこすると手に水が付いた。

いや、水じゃない。
俺の涙だ…

「だ、大丈夫…?」

心配そうに見つめる凛。

よく見ると、凛もいい顔立ちしてるんだな…

可愛い…

「光?」

「…は!?」

「え?」

不思議そうに見る凛。

俺、今…

凛をかわいいって思った…?

「え…と?」

「ダダ大丈夫だ!」

「そう?なんか、変だなー」

「気のせいだろ!へへっ」

そして、成瀬が来た。

「何何~?ふたりで何してんの?」

「何もねーよ」

「話してただけー」

そして、成瀬は少し悲しい顔をしていた。

(…?)

「あ、そういえば。
大沢くんは、寝不足だからちゃんと寝なよ。

劇の練習中止になったんだから」

「え!?まぢ?早く寝ないと!」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「…もう寝たよ。」

「ほんと…早いな」

凛ちゃんは安心したような顔をしている。

きっと、大沢くんが目を覚ましたからなんだ。



僕の恋は叶わない。
でもいいんだ…。

凛ちゃんの隣で…
隣にいるだけでいい

だから…
だから、どうか。
僕の居場所を誰にも譲らないでね。





──────

自分の気持ちに気付いた光。
そばにいるだけでいいと願うなる。

そして、凛は?

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