「苗!待てって!」
俺は苗の腕を掴んだ。
そして、苗の顔を見るとポロポロと大きい目から涙が出ていた。
「ご、ごめんね…ッ私のせいで、光くん…それに、伊野さんまで…ッ」
と謝ってきた。
「苗は、悪くないよ。凛だって、悪くないんだ…。俺が、買い物を頼んだから。」
「うん…、私のためにこんなことになっちゃって…中川さんはただ、伊野さんが羨ましいんだよ。」
「え?中川が、凛を?」
「うん、伊野さんは何でもできるし、モテるから。」
「凛って、モテんの?まぢか!」
「それが、憎かったんじゃないかな。
だから…」
「そうなんだ…。なあ、苗。」
「なに?」
「信じてれてありがとな。
じゃあ、俺教室に戻るわ。実はさ、宿題が終わってねーんだよな」
と笑いながら言う。
すると、苗は笑って
「うん、頑張って」
とだけ言った。
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今朝のこともあり、クラスの皆から距離を置かれた私。
でも、親友の奈々と莉久(りく)は当然のように隣にいてくれる。
(奈々と莉久がいてくれて本当に良かった。)
そして、光が戻ってきた。
「凛!」
と私の名前を突然呼んだ。
「苗の誤解はちゃーんと、解いた!
それから、数学の宿題見せてくれ~!!」
と念入りに手を合わせる。
「そっか、良かった。」
と私は一旦言って、ため息をついて言った。
「あんたさ、宿題やんなさいよ。
成績悪いのがバレバレよ…」
「ごめんって~!」
私は、光に自分の数学ノートを渡した。
「ありがたき、幸せ!」
「はぁ…」
と奈々が言う。
「早見!」
「ん?」
「今日さ、一緒に帰らねえ?部活が、ないんだ」
「金木、分かった。」
と瑠夏と奈々は照れくさそうに話している。
(ああ、青春だ…!)
「あの二人、付き合ってるのバレバレだよね!」
と耳打ちする莉久。
「うんうん!青春だよ~」
と感心している。
でも、それを見て気に食わない人がいたみたいで…。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「お腹減った~」
「ほんとほんと」
「じ、じにぞ…」
と奈々はお腹を抱えている。
「ちょ、我慢我慢!」
と応援する私。
「もう少しで、私たちの番だから!がんばって!奈々ちゃん!」
そう。
今、私たちがいるのは売店。
つまり、お昼の時間だ。
「なにをたべるんだい?」
「私達だ!」
と私達は顔を見合わせて言った。
「私はカレーパンと焼きそばパン!」
と奈々。
「えっと、エッグハムパン」
と莉久。
「ジャムパン!」
と私。
私達はそれぞれ、お目当てのものを買い込んで、屋上へと足を運んだ。
「奈々ちゃん、ふたつも食べるの?」
と心配したように言う莉久。
「うん?2つ食べないと午後の授業はやり切れないよ!2人こそ、一個で足りるの?」
「「私は、全然」」
と莉久と被った。
「そっか~」
屋上に着き、やっとお昼!
「そういえば、今朝のやつ大変だったね。」
「あ~わはふ~!」
「奈々、口の中飲み込みな。」
「あ、」
ゴックン!
「凛も、大変だったでしょ?大丈夫?何もされてない?特に、中川七海!」
「あ、うん。中川さんは今朝から何もしては来ないよ。多分、もう飽きたと思うし!」
と私は明るく言った。
「そう?なら、良かった!」
「安心したよ~」
と優しそうに奈々と莉久は言ってくれた。
「うん!」
「あ!」
と奈々が言う。
「「ん?」」
「自動販売機でジュース買ってくる!
イチゴミルク!」
「「…ジュース」」
「それなら、私も行こうかな。レモンティー飲みたい…。」
「莉久も?じゃあ、ふたりで行ってきなよ。待っとくから!」
「うん!」
「すぐ、戻るね」
と奈々と莉久は階段をトントンと降りていった。
「ふぃ~」
夏風が気持ちいな…。
「もうすぐ、プールの季節か」
(楽しみだな~)
ガタッ
「あれ?もうもう戻った?ふたりと…え」
「あら?伊野さん」
と目の前にいたのはふたりではなく、中川さんだった。
「何して…」
「悪いの?ここに来ちゃ」
「いや、別に」
「あ、そだ」
とこっちに来ながら中川さんはポケットの中をあさくっている。
「…?」
「これ、あ・げ・る♡」
と渡された…と言うより、頭に投げられた。
「…え」
髪の毛がベットリしていた。
「甘…、いちご?」
「ジャムよ。あんた、ジャムパン買ってたじゃない。わざわざ、渡してやったのに!
何その顔?受ける!!」
と中川さんは笑った。
(何が、おかしいの…?)
目の前がにじむ。
「どうして、こ、こんな…」
「あらら?足りなかった?じゃあ、もうひとつ…」
ま、また…!!
「は!?何…よ、あんた!?」
「うるせー。てめぇ、何してんだよ」
…この声、
「…ひ…かる…?」
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人物紹介
○ 山内 莉久
凛の親友。
コメントのところに感想を書いてくれたら…
嬉しいです…💗
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。