「凛ちゃん、大丈夫?」
「なる…」
ああ、なるに見られた…
泣いてるところ。
「ご、ごめんね…わ、わた…」
「いいよ、」
なぜかなるは悲しい顔をしていた。
「凛ちゃん…さ、好きなの?あの男の子」
「……ッ」
私は背中をビクッとさせた。
分かっちゃうよね…
「…うん」
「そうなんだ…」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
やっぱり、凛ちゃんは好きなんだな。
あの男の子のこと。
確か、同じクラスにいたし…
凛ちゃんとも話してた。
仲がいいのかな…?
凛ちゃんが僕の目の前で泣いている。
ああ、愛おしい。
「落ち着いて…ね?」
僕は、凛ちゃんを抱いた。
いつもなら、触ると距離られるのに今は違う。
安心したような顔になっていた。
「……ッ」
今は…今だけは、凛ちゃんのそばにいなくちゃいけない。
僕に振り向かなくても…、笑顔にさせたい。
「なる、ありがとうね…」
「え?」
突然、凛ちゃんが言った。
「実はね、光とは中学で知り合った。
最初は、同じサッカーをしてたの。でも、私がやめちゃった…。男と女の違いを分からさせられたから…
でもね、光は違ったの…
光…は、私を支えてくれた…
だから、好きになったんだ思う。
でも、その時には失恋…して…た…」
と、話の途中で凛ちゃんはまた泣いた。
「凛ちゃん、もういいよ。
ね?もう、いいから…」
「ご、ごめん…」
凛ちゃんは声を上げて泣いた。
その気持ちはよく分かるよ。
だって、多分今、僕も同じ気持ちだ…
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……ッ」
俺は見てしまったんだ。
凛が、成瀬と抱き合っているところを…
「なんなんだよッ」
バンッ
壁に八つ当たりをした。
「くそ…、なんで俺こんなイラついてんだよ…」
(凛が、笑ってんじゃん?
それって、成瀬のおかげか?なんで、さっきは泣いてたんだよ…わかんねぇよ)
気持ちがぐちゃぐちゃに壊れそうだ。
なんなんだ…?
この気持ち……。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私は、なるに連れられるまま駅に着いた。
「なる…?どこ行くの?」
「あそこ!」
なるが指を指した先にはカフェがあった。
ん?あの、カフェ…
「…あ!あれって、昔よく行ってた」
「そうだよ。凛ちゃんの大好きな七色パフェがあるとこ!」
「わぁ~!久しぶりだよー!」
「でしょ?家からはまあまあ離れてるからあんまり行ってたかったんじゃないかなーって思って」
「そうなんだ」
私は中学の時、行ったことがあるのを思い出した。
今から言えば、とても最悪だったのかもしれない。
苗ちゃんと光と私で行ったのだ。
正直、あの時は気まづかったな…。
あれから、行ってないや
「どうしたの?早く、入ろうよ。
僕も、楽しみでさ~」
とへにゃっと笑った。
「なる…、うん!入ろう」
そうだよ、今は楽しもう…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。