「んで…話ってなんだよ?」
大沢くんが言う。
「うん、その前に…ありがとう」
「え?」
僕の言葉が以外だったのか目丸くしている。
「凛ちゃんについてってくれたでしょ?もし、二人が一緒じゃなかったら、大変なことになってたと思うよ。」
「ああ、たしかに。凛は方向音痴だしな~」
と微笑んでいう。
「その顔だよ。」
「は?」
「大沢くんは凛ちゃんが好きなんだろう…?」
「……」
大沢くんが黙った。
「ちゃんと答えてよ。」
僕が責めるように言うと、大沢くんが口を開いた。
「俺は…」
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キャンプファイヤーが始まった。
でも、なると光だけいなかった。
なんでだろう?
まあ、何かあるのだろう!
と呑気(のんき)に考えるわたし。
莉久と二人でキャンプファイヤーを眺めていた。
キャンプファイヤーの周りで踊るのはカップルだけ。
もちろん、奈々と金木くんも踊ってる。
「奈々ちゃん、顔が真っ赤っか~!」
「わ!ほんとだ!金木くんも恥ずかしそうにしてるよ~」
と莉久とニヤニヤしていた。
他にも、たくさんのカップルが踊っていた。
でも…
光は苗ちゃんと踊らないの…?
と、考えていると横から声が聞こえた。
「苗ちゃん、可哀想だよね」
「確かに。「先約がある」って言われたんでしょ?先約って、誰かと約束してたのかな?」
「わかんない。でも、大沢くんが浮気なんて想像出来ないけどね」
「まあね」
と話し声が聞こえた。
莉久も聞いていたらしくわたしの耳元で言った。
「大沢くん、どうかしたのかな?」
「確かに…。でも、キャンプファイヤーが始まってからずっといないしね。」
「うん…」
莉久は曖昧に答える。
そして、なるがいた。
「あ、なる!」
「凛ちゃんに莉久ちゃん」
「どこ行ってたの?」
「ん~、色々?」
「へぇ?よくわかんないけど…」
わたしはなるの顔を見て何となく、聞くのをやめた。
なんだか、気分が悪そうだったから。
「僕、疲れたから先に戻ってるよ。」
「え、分かった…おやすみ」
「うん。」
そしてなるは、行ってしまった。
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「……ッ」
僕は、大沢くんの答えに驚いた。
『ちゃんと答えてよ。』
『俺は…、凛の事はそんなふうに思ってるのかもしれない…』
『やっぱり…じゃあ…』
『でも!俺は、それ以上に苗が大事なんだ…きっと。』
『そ、そんなの…』
『分かってる。こんな、わがままな事ダメだって…ちゃんと、苗と話すよ。
苗はほんとに俺のことを好きでいてくれた…
でも、だからこそ。
話すべきなんだ…』
『大沢くん…』
『成瀬、ありがとな…
お前のおかけで気づけたんだぜ?
感謝しかねーよ』
と言って、ニカッと笑った。
(キミはどれだけ、凄いんだよ…)
僕は、大沢くんにかなわない!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。