「さー、何しゃべったか、とりあえず聞かせてもらおっか」
お風呂入って歯も磨いて、パジャマに着替えた。
時計はもう零時。
俺たちはベッドに入って電気も消して、すっかり寝る体制。
帰る時も夕飯の時も、普通に楽しく過ごしてたから。
聞いて来ないな、忘れたのかな?
なら、こっちから話を振って寝た子を起こす必要はないよな、って思ってた。
のに。
もう寝ようねってオレンジの常夜灯だけにして、オヤスミのキスを交わすこのタイミングでかぁ。
逃げられないじゃん。
仕方ないから俺は覚悟を決める。
「……仲良しんとこ泊まった時」
彼は無言で、俺の次の言葉を待ってる。
うぅわ、こわ。
分身むりやり勃たせられてまたがられたなんて、ほんとの事はとても言えない。
いくらセクシーな、彼の息混じりの声聞かせられたからって、刺激されて勃っちゃったのは事実なんだし。
そこは絶対言いたくない。
「あいつがふざけて、俺の上に乗って、動いてみせるから、つい……」
「つい?」
「そこは上下に動くんじゃなくて、前後に動くんだよ、彼はそうしてるよって」
「っマエなぁ」
彼のあきれた声。
「オレさ、夜の話禁止っつったよな?」
「ごめんなさいっ」
俺は彼をぎゅっとする。
離れないで、俺の血潮。
そしたら彼も、抵抗せず、ぎゅってくっついてきた。
「仕方ねーなー。
どうせ相方から、うまくいかない相談でもされたんだろ?
でもそこはさ、人によるんだしさ。
オマエもなんでそういう事しゃべっちゃうかな」
「だって……。
俺…あなたが俺の上で腰をグラインドさせる姿、すっごくきれいだって思ってるし……すっごく、その、興奮しちゃうんだよ。
そんで前後に動いてくれると、あなたの中で分身が擦られて、それもすっごく気持ち快いから……」
常夜灯だけが灯る暗闇の中で、彼が俺を見つめて、目を細めたのがわかった。
「そう、なの?」
「うん……だから……つい。
ごめんね?」
「ほんと可愛いヤツ」
ぎゅっと抱きしめられる。
思いがけない反応に驚いてると、彼の頭が俺の肩と首元ですりすり動く。
その可愛い動きにきゅんとする。
「そんな風に言われたら、オレ、怒れないじゃん。
オレは、オマエが気持ち快いように動いてるつもりだから。
快くて良かった」
「あれ、俺のための動きだったの?」
「オマエと、自分のためな」
そおだったんだ、知らなかった。
「あれは騎乗位っつって、もともと馬に乗るように動く体位なんだよ。
上下に跳ねるような動きも確かにするんだけど……てか、オレらにとって快けりゃどうでもいいよな?」
「うん。
俺は、相手があなただってだけで、何しても気持ちいいもん」
「他のヤツだと?」
「怖いからムリ」
彼がプハって笑う。
「ウッソだぁ」
ウソでいい。
そこムキになって否定すると、彼だけに反応してるって根拠をしゃべらなきゃならなくなる。
笑いながら俺の隣で安らぐ彼の頭を撫でながら、俺も安らいでた。
彼といると、ほんとに、なんでこんなに安心するんだろ。
安心して、どきどきしたり熱くなったりできる。
たとえ怒られても、ダメなとこを見せて呆れられても、彼ならきっと最後は笑ってくれるから。
だからこそ、絶対、ちょっとでも苦しめたり悲しませたりしたくない。
仲良しとのケンカについて、詳細しゃべらなくてすんでほっとする。
なんでもありのまま言えば良いなんて、子供っぽいことは考えない。
「……オマエってほんと優しいよな」
「そう?
あなたがそう思うなら良かった」
「でも最近、リミッター壊れがちだけどな(笑)」
!!!
「暴走キラキラ(笑)」
「それはほんとごめんっ。
最近、自分でもちょっとおかしいって思ってるんだ。
明らかに、前よりずっとガマンが効かなくなってるよね?」
「んん?
素が出てんだろ?
いい事じゃん。
オレ、ぜんぜん責めてないよ?」
彼が俺のあごにキスしてくる。
「オレはそんなオマエも大好きだもん」
がじがじ。
ちゅちゅ。
「いつも冷静なオマエがさ、歌とオレには我を忘れてくれんの。
嬉しくてぞくぞくする」
ぺろ。
ちゅちゅ。
「すごく愛されてる気がする。
オマケに、オマエって、存在自体がすごく甘いし」
彼の手が俺を撫でてきた!
「だーめ」
俺は、まるで俺を育てようとするように俺を撫でる、彼の手を握る。
「煽んないで」
「あおってなんか……」
「明日早いんだから」
「早く休みになんないかな」
触れるだけのキスをする。
「欲求不満になっちゃう」
その言い方があんまり可愛くてつい笑う。
「お台場行って、観覧車乗って、美味しいもの食べて、買い物して。
帰ったら愛し合お?」
「先に」
「朝から?
(笑)出かけらんなくなっちゃう」
「……前の夜」
「(笑)うん。
メンバーみんなと遊ばないで済んだらね」
「もぉ。
今すぐだって欲しいのに」
「離れた方がいいの?」
「やだ。
このまま寝たい」
(笑)やば。
反応してきちゃった。
静まれ、俺。
「好きだよ……」
「キラキラ……夢に会いに来て」
「……うん」
早く会いに行かなきゃ。
……おやすみなさい。
〈続きませんよ? たぶん〉
〈ウソでした……続きました、すみません。
続きは 『You are my glad. 』へ〉
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。